2007/08/31 Category : Books 『花ざかりの森・憂国』三島由紀夫 花ざかりの森・憂国―自選短編集三島 由紀夫 昭和53年発行の紙が茶けたやつを、父親の本棚から拝借して読んでたら感 心 さ れ ま し た・・・・・・( ・ω・)流麗な文体も、登場人物たちのやるせなさも、平成になった今なお衰えていないのはさすがミシマ。『憂国』だけは映画観てすぐ立ち読みしたんだけど、改めて読み返して、「あぁ、こうなりたかったんだろうなぁ……」「実際、自決後の世ではどう見られてるかなぁ……」と、思い巡らせてみたり。森村泰昌がね、三島由紀夫の自決を「戦後日本のトラウマ」みたいに言っていたんですよ。確かに、なんとなく、言及するのがはばかられてしまう話題じゃないですか?誰よりもまず、三島由紀夫の身内が触れてほしがらなかったようなところがある。そして日本全体が、そうなっていたような気がする。ま、そこに敢えて触れようというのが、いま森村泰昌がやってる試みなのですが……。本の話に戻ると、ミシマ本人による作品解説も付いています。『憂国』については露骨に力を入れて語っているので、そちらも必見。 [0回]PR
2007/08/31 Category : Books 『流れる』幸田文 流れる幸田 文 すっごくうっすい文庫本なのに、読むのにめっさ時間使いました。2週間とか、3週間?たぶん「濃い」んだな。描写の綿密さとか、的確さが。歯ごたえのあるおせんべいみたいな。それが短編だとちょうどいいんだけど、長編になるとアゴが疲れる。でも、食べてしまう。滋養とか滋味とか、そういうものを感じて。ド名作だから、いまさらあらすじを説明するまでもないけれど、戦後、傾きかけの芸者屋に泊り込みの女中として勤めだす、幸田文の自伝的小説。幸田文の作品って、ストーリーから何かを得たり感じたりするもんじゃないと私は思ってる。だから彼女の作品には、オチがない。いらない。実際の生活だって、オチるもんじゃなく、続いていくものだし。仔細な表現からわかる、幸田文の観察眼・感受性にびびるために、読んでいる。あくまでも、私は。この作品は、すごかった。長編だけど、ダレることなく、全編を通して芸者たちの浅ましさ・愚かさ、そして愛しさが伝わってきた。この人の精神力ってすごい。疲れも飽くこともしらない、人間ビデオカメラみたいだ。。。と思う。 [0回]
2007/07/25 Category : Books 『薬指の標本』小川洋子 薬指の標本おうわさはかねがね、といった感じの本。やっとこ読みまして。なんか、オンナ版村上春樹みたいだと思った。日常と異世界がひとつづきになっちゃってる感じが。でもゴシック・ロマン的な雰囲気(確かにこれはフランスを舞台に映画化したくなる)とか、エロティックな事柄への感性はとても「女性」的というか、「乙女」的というか。うーん、でもフランスの匂いがして、なおかつハルキの妹みたいな匂いがして、っていう以外に、あまり印象が残らないのが難点といえば難点か。ちょっと、そういう「雰囲気」が鼻について、主人公に共感したりとか、しそびれた印象があります。 [0回]
2007/07/20 Category : Books 『包む』幸田文 包むなんでだろう……文章が明快だし、読みやすいのに、読むのに2週間以上かかってる気が……詰組みが狭いからか?何をさておき幸田文。私が唯一、はばかりやことわりなく「好き」といえる作家。特にエッセイが好きですねぃ。父・幸田露伴にたたきこまれた「仔細なくものを観る目」「的確に描写する文章力」そして、自らもその「目」と「筆」の対象にしてしまうストイックさ。表題作「包む」はやっぱりいい話なんですけど、自身の容姿に対するコンプレックスが窺える「きものの話」とか、自身の浅ましさ・厭らしさを恥じ入る孤児院の話なんかが、個人的には好きです。次は『月の塵』に挑戦です。果たして。 [0回]
2007/07/20 Category : Books 『1ポンドの悲しみ』石田衣良 1ポンドの悲しみひさしぶりに石田衣良センセイ。恋愛小説短篇集。さいしょの作品は、久しぶりの石田節だったからか実際そうなのか、どことなく文章がぎこちない感じ。でもすぐにそのsweet&tenderな世界に慣れ、後半はニヤニヤしながら読んでました。えぇ、何か。『スローグッドバイ』と比べて「オトナの恋愛」を描いた、というフレコミでしたが、登場人物の年齢設定やデートスポットが違うだけで、あまり心情的な差は感じませんでした。「石田衣良の」恋愛小説、て感じ。表題作がいちばん良かったです。遠恋してるカップルなら、少なからずグッとくるハズ。 [0回]