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紫式子日記

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『ないものねだり』中谷美紀


ないものねだり
ないものねだり




中谷美紀、初エッセイ集。

an・anでの連載『男子禁制!?』を単行本化したものです。



内容は多岐にわたり、グルメ・習い事といった同世代の女性にも共有されるものから、女優業に関して思うことまで、様々。

ことばの端々に、現状を見極めつつ、進歩・成長していこうという意欲がのぞきます。

そしてそれらが、中谷氏のイメージそのままの、透明感のある、けれどキュートな文体でつづられています。



てゆーかまじで文才ありますねー。才女、才女!

毎回半ページ、1200字の原稿なのですが、きちんと序破急が付いていて、慌しい感じも尻切れトンボな印象もない。

漂わせる知性はフェイクじゃないですね。

これからも芸能界で特異な存在感を放っていくのでしょう。

少なくとも、これを読むと、そんな気がしてきます。



ちなみに、タイトル「ないものねだり」は、巻末に収録されたエッセイから。

本来何にも縛られないのが好きであるにもかかわらず、安定をほしがっている自分もいる。
そんな「ないものねだり」について書かれています。

ちょっと共感を覚える一作だったので、特記しておきます。

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『芸術家Mのできるまで』森村泰昌


芸術家Mのできるまで
芸術家Mのできるまで




以前『踏みはずす美術史』を取り上げた森村泰昌さん。

今回の本は、彼の自伝です。



幼少の頃通っていた絵画教室から、高校での体育会系ノリの美術部、美術講師を経て現在の評価を得るまで……。

そしてその間に生じた、外部との葛藤、内省などがつづられています。



今回も思うことは、本当に頭いーなぁということ。

もっと言うと、きちんと「美学」「哲学」を言葉で把握して、その発露として作品を作っている。

つくづくそういう人好きだよね、私。デュシャンとか及川光博とかさ。



この本でも、まえがきで独自の「自伝論」が披露され、それを「フィクショナル・ノンフィクション」と名付けています。

また、70年代と80年代の差についての体験は、現代美術史を鑑みる指標にもなります。



あとこの人の場合欠かせないのは、男/女に関する記述。

小学校の身体検査で

「男は裸でじゅうぶんや」

と言われ、納得できなかった思い出も書かれています。

世のなかは、裸でも平気な男たちと、裸でははしたない女たちによって成り立っているのではない。

ひとの前で裸になるのがいやな人間と、それが平気な人間がいるだけである。

ふたつの組にふたつの性を振りわけられるのが当然なんて、そんな法律は誰が作ったんでしょう。



最も興味深かったのは、挿入されている論文『三島由紀夫あるいは、駒場のマリリン』


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『パーク・ライフ』吉田修一


パーク・ライフ
パーク・ライフ




表題作と『flowers』の二作を収録。

『日曜日たち』を読んだときに得た感覚が、再び。



吉田修一の作品って、「日常に潜む非日常」というか、「無害なんだけど奇妙な感覚」のレポートみたいなところがあると思っていて。

『パーク・ライフ』で一気に風景を目に流し込んで「くらくらする」とかね。

スタバの女性客の話とか。

けれど、村上春樹みたいに異世界には行ってしまわない。

あくまでも日常の中で、それらの感覚は泡みたいに水面に顔を出す。

そして吉田修一は、それらの感覚を提示して、どうすることもない。

それゆえの居心地の悪さ、放っとかれている感があったりします。

嫌いじゃないけどね、そういうの。



あと、偶然起こる複数の出来事が、互いに結び付けられる。

「いやいや、それはさすがに出来すぎだろ〜」

とツッコみたくもなる。

けれど、その結び付きから粋なエンディングが出てくるから、

「まぁいいか」

ともなる・笑。



『flowers』は、ちょっと毛色が違いましたね。

居心地悪さが、あくまでも日常に取り込まれていってうやむやにされてしまう感じ。

実際そういうシーンもあるんだけれど。



焼き魚自体は美味しかったんだけど、のどに1本小骨が刺さってる みたいな読後感。

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『正しい保健体育』みうらじゅん


正しい保健体育
正しい保健体育




いやぁ……

やっぱり、みうらじゅんはすごいね。



まずここまで凝りに凝って、教科書風にしているところが素晴らしい。

イラストレーターさんのセレクトが良い。

実際に教科書の挿絵描いてる人つかまえてきたんじゃあるまいか。



本編は、もう1ページ目から最後の「谷川俊太郎さんからみうらさんへの質問」まで、全編フルスロットルみうら節炸裂です。



セックスは20歳まで禁止らしいです。

あまり早く体験してしまうと、女子への「優しさ」を欠くことになってしまうのだとか。

怖いですね。これはこの本を読まなければ、踏みはずしてしまいかねないルールです。



「義務教育」に関する考察も興味深い。

それはすなわち「恥ずかしさ」を教える教育なのだという。

これは、小中学校の先生方も思いに留めておくべき点でしょう。

また各自で行なうオナニーは、それらを補う「自分塾」という区分になります。



なんかもう、挙げはじめたらキリないんで、読んでください。ハイ。

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『娼年』石田衣良


娼年
娼年




やっと、今更、石田衣良。

なんで今まで読んでなかったかっていうと、まぁ単に文体が好みじゃなかったんです。

なんか、サラッとしすぎてるというか、あまりにするすると入ってくるから、却って抵抗があったんですね。

特に池袋ウエストゲートパークシリーズで顕著だったな。



だけど友達に大好きな奴がいて、それならば1冊くらい拝読せねばなと。

で、IWGPでもないし、有名作品だし、立ち読みしたときの「手触り」も良かったし……で、『娼年』です。



感想。

やっぱりこの人の文は、さらさらしすぎてるなー。

うっかりしてると、意味を認識しないまま飲みすごしちゃいそう。

「石田衣良特集」みたいなので使われていた表現なんだけど、「普通の」言葉遣いするんだね。

でもそのせいか、一気読みしちゃいました。

ES書きの合間縫って。



話も面白かった……。

うん、面白かったな。

一気に読めた訳だし。

設定はありきたりなんだけど、運び方が上手いんだろうね。

キャラクターが魅力的。キャラが立ってるっていうか。



グッと来たのは、巻末、「娼夫」を続けるか否かに関する周囲のアプローチについての

「どこまでも正しいメグミは強制をやめないのに、法や常識の外にいる咲良は最後の瞬間までぼくの自由を大切にしてくれる。ぼくは咲良の心づかいがうれしかった。」

っていう言葉かな。

文庫版・解説の姫野カオルコさんは、この作品を「やさしい」と評している。

なるほど、この作品全体を包む、さらさらとした、薄くて柔らかい、卵の薄皮みたいな雰囲気は「やさしさ」なのか。



ひょっとしたら「やさしさ」を素直に受け入れるのが照れくさいから、私は石田衣良が苦手なのかもしれないなぁ。

なーんて。

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