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紫式子日記

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『東京湾景』吉田修一


東京湾景
東京湾景


なんか……

「え、これ吉田修一!?」

って感じなんだけど、私なんかは。

なんたって、ディテール細かすぎ

この人の他の作品て、こんなに地名とか風景描写とか明確だったっけか。

これはやっぱりアレか、自身の経験に基づいているからか。



とはいえ「吉田修一」ってのを手で隠して読めば、けっこうスキなタイプの作品でした。

過去の恋に傷ついていて、出会い系サイトで出会った2人が、本気の恋を始める勇気を持てないままに本気になり、自分たちの感情に戸惑っていく……というおはなし。

やっぱこういう「伸るか反るか!?」「行っとくかやめとくか!??」みたいなもどかしい駆け引きを言葉にしてくれるから、小説ってありがたいです。

終盤の

「信じようとは思うのに、なかなかできないっていうか……」

という亮介の台詞なんか、みんな思ってる。

当然のように思ってる。

でも、当然すぎるし口に出したら元も子もないしで、思ってないことにしている。

逆に、それを言えちゃう仲になった、亮介と美緒を羨ましく思えます。



あと好きなのは、これも亮介の台詞で

「だから、好きは好き。……いろいろないよ」

物語をすべて読みきってからこの台詞を見返したら、

「そうか、そういうことなのか」

と妙に腑に落ちて、またなんだか気分があったかくなりました。

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