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紫式子日記

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『不安の世紀から』辺見庸



10年も前の本なのに、全然古びていない……。

というか、それだけ、この10年・20年で
問題が根本的には解決されてない
ってことだな。


内容(「BOOK」データベースより)
アメリカの歴史心理学者リフトン博士、
スペインの代表的作家ゴイティソーロ
そして旧ユーゴ出身の天才映画監督クストリッツァ。

著者は、彼らと絶対的価値の喪失、カルト宗教、
ボスニア紛争、死の諸相、マスメディアの病理、
新時代を生き抜く思想などについて語り合い、
しるべなき時代の不安の正体を探り、21世紀社会を展望する。

大好評だった番組「NHK・ETV特集」をもとに再構成、
新編を加えた、今、最も根源的なドキュメントである。
本文庫のために書き下ろした卓抜、過激なメディア論
「不安の球根…」は7章に収録。



辺見先生自身も現場に居合わせた、
地下鉄サリン事件への言及が多い。

「日本的な、組織への忠実さ」
事件の背景にあったのでは、と語る。
事件時にその場を立ち去ったビジネスマン、
駅員やマスコミなどの残酷さも
ただ、組織に忠実だっただけなのではと。

「良心の立入禁止区域」の話を思い出す。
原爆投下したパイロットが
自分だったとして、自分だったら
太平洋に引き返して海に捨てられる?


「異常」「狂気」を仕立て上げてしまう
マスコミ・ジャーナリズムの力だとか。

メディア自体に悪意はないけれど、
たずさわる人間の志は問われる、とか。

「美」や卓越した文化は
異文化・異質なものの交流から生まれる。
それに反する民族意識・民族主義は
内紛をもたらしているだけだし、培われてきた
素晴らしい文化・記憶を殺す
……とか。


しごく、まっとう。
しごくまっとうなことしか書いてない。
べつにこの人、極左とかじゃないと思った。
だって中庸の「ヨウ」って書いて庸ですよ。

ただその「まっとうなこと」を意識してしまうと
意識してこなかった自分の中の「組織の規範」が
客観視されるようになって、浮かび上がってしまう。
組織を束ねてきた「力」が立ち行かなくなってしまう。
この人に敵が多いのは、そういうことなんだと思う。

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