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紫式子日記

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鶴舞ファンタスマゴリアレポート(2/3) 寺嶋真里×今野裕一トークショー

長いので分けてます
1/3 上映前日記
2/3 寺嶋真里×今野裕一トークショー
3/3 上映作品レビュー



15時半になり、観客もかなり集まってきた中
(しかし皆どこで情報手に入れたんだろう……。私寺嶋監督本人のツイッタ~だったけどさ)
「鶴舞ファンタスマゴリア ~第1回名古屋野外アンデパンダン映画祭~」は幕を開けました。

まずは『アリスが落ちた穴の中』監督の寺嶋真里さんと
『夜想』編集長&ペヨトル工房主宰の今野裕一さんの
トークショー。話題の中心は上映作品のひとつである
『アリスが落ちた穴の中』。
アリスが落ちた穴の中 - Dark Märchen Show!!


W金髪


私がメモって編集させていただいたものを掲載します。
口調が変わってたりところどころ省いたり
順番を入れ替えたりしていますが、
発言の主旨は変わってないハズなのでご容赦ください。


◎着想から出演依頼まで
――『アリスが落ちた穴の中』は愛知芸術文化センターの依頼で制作された作品ですが、
  いつ頃オファーがあったのでしょうか。

寺嶋真里(以下寺)「愛知芸術文化センターは、日本の公共機関で唯一、
 アーティストにお金を渡して作品を作らせるということを
 やっているところなんですね。
 映像作家にとってはとてもありがたい存在なのですが、
 制作を担当するアーティストを決めるのは公開コンペではないんです。
 それぞれの年に複数名アーティストを指名して、企画書を提出させて、
 選定委員がそれを見て最終的にどのアーティストに依頼するかを決めるんです。

 ずっと前にもお声を掛けていただいたことがあったのですが、
 一度目は企画書を出したもののボツ、二度目は私自身が不調で
 企画ができない状態で出せず、三度目にしてやっと
 愛知芸術文化センターさんと一緒にやらせていただくことができました。

 2008年の終わり頃に企画書を提出しました。
 選考結果は2009年1月頃来たのですが、公共機関なので、
 2009年度の予算で依頼されたものは、年度末の2009年3月末までに
 提出しなければなりませんでした。
 3ヶ月未満の期間で仮のものを納品し、
 実作業は2009年12月のプレミエのときまで続けました。

 作品の構想はもう少し前、2008年の夏頃からありました。
 私の作品を評価してくれた方の中に、大阪のとても可愛い女の子がおられて、
 その子を主役に作品を作りたいと思っていたんです。
 彼女に似合う役は何だろうか、と考えてアリスをモチーフにしようと決めました。

 ところが構想中に中村キョウ(そうにょうに喬)先生の撮った
 Rose de Reficul et Guigglesの写真に出会い、
 彼女たちの姿を映像化したい! と思うようになりました。
 実際のパフォーマンスを観てその思いは強まり、出演を依頼しました。

 Rose de Reficul et Guigglesさんたちのテーマは
 『ヴィクトリアン・アンダーグラウンド』で、
 ヴィクトリア朝時代の物語であるアリスにも合っているな、と。」

――マメ山田さんの出演が決まったのはどの段階だったのでしょうか。

寺「Rose de Reficulさんが推してくださいました。
 よく勘違いされるのですが、マメ山田さんは客演ですので。後から決まったんです。
 主演はRose de Reficul et Guigglesの皆さんですので。」

今野裕一(以下今)「寺嶋さんって、そういうところが変わってる。
 アリスなのにアリスが主役じゃない。
 しかもダブルキャストで人形とマメさんがアリスって発想がすごい。
 人形だけでも撮れたよね、あれ(笑)」

寺「でも……やっぱりマメさんだったんです(笑)」

――最終的に撮り終わったのはいつだったんでしょう。

寺「メインの撮影は一泊二日のロケでした。で、足りなかったところは
 都度都度撮り足しました。寄せる波の映像とかですね。」



◎寺嶋真里が切り拓く映像芸術の未来
今「本当はDVDをアートアルバムの形(※豪華特装版のこと)で販売する予定はなかったんですよ。
 だけど、寺嶋さんの熱意と人を巻き込む力に押されてそうすることになった。
 そういう『力』がある。公共機関で撮ったものがこうした形で販売されるのも珍しいし、
 自分が今日ここに来ているのも寺嶋さんの力。自分の作品を推す力がすごい。
 今の時代、映画監督ってそうじゃないと生きていけないのかもしれない。
 特装版DVDを最後の一本まで売り切る! って意欲がみなぎってる。
 で、売り切ったら僕と寺嶋さんのコンビは解消される(笑)。

 寺嶋さんの切り拓くところってすごく面白くて、実はこのDVD、Amazonで廉価版も売ってるんです。
 で、けっこう売れてる。あんまり映画監督でそういうの自分で思いつく人っていなくて、
 『映像を人に渡していこう』という売り方をするのがすごい。」

※廉価版。買えます


寺「文化事業ですから。Rose de Reficul et Guiggles、ゴスカルチャー、球体関節人形、
 そういった文化を伝道するために我々やってますからね!(笑)」

今「名古屋はゴスカルチャー発祥の地なんだよね。僕も詳しくなかった頃、
 勉強しに来た。おかげで今はまみれにまみれてるけど(笑)。 
 で、思うんだけど、ゴスもロリータも、根本でやってる人たちは
 マイノリティーなんだよね、たぶん。流行の『ゴスロリ』とはちょっと違う、
 『ゴス』や『ロリータ』。

 そこのところ行くと、寺嶋さんの被写体は『ふつうじゃない』人たちばかり。
 そこにスッと入っていって、映像を撮るのが寺嶋さん。
 マメ山田さん、清水真理さんを巻き込んで、友だちになって、入り込んでくのがすごい。

 いわゆる『特殊な人たち』のところに入っていって作品撮るときって、どうなの?
 絵コンテとかたぶん描いてないでしょ?」

寺「コンテ描いてる暇ないから、相手の話をよく聞いて
 『じゃあこうまとめればいいかなー』と。」

今「あぁ、『話を聞く』んだ。聞けるんだ(笑)」

寺「私だって人の話くらいはちゃんと聞けますよ!(笑)
 『アリスが落ちた穴の中』は脚本の下書きを書いて、
 ロウズさんたちにチェックしてもらって、
 ブラッシュアップやNGをもらい、都度書き直しました。」



◎出演者について
寺「ロウズさんは本当に不思議な人、シャーマンなんです。
 私が出演を依頼したタイミングが、Rose de Reficul et Guigglesも
 映像に挑戦したがっているときだったんです。
 ロウズさんは『願いは叶うのよ』って日頃おっしゃってる方なんですけど、
 ロウズさんの願いは本当に叶うんですよね。」

今「寺嶋さんもシャーマンだけどね(笑)。

 Rose de Reficul et Guigglesは、『アリスが落ちた穴の中』ができる
 1~2年前から夜想に売り込みに来ていたんだよね。
 『載りたいです』みたいな感じで。
 白塗りだし怖いなと思って保留してたんだけど(笑)、寺嶋さんによってつながった。
 あの人たちすごく変わってるんだよね、ふだんの生活も家もあんな感じなんでしょう。

 マメさんは本当に演技者だからね。
 僕は小人症のタレントさんと何度か仕事をしたことあって、
 皆その体格を上手く使ってるんだけど、マメさんは特にすごい。
 マメさんは演出意図まで読んで演技できる人なんだよね、
 『ここで僕を出したってことはこういうことなんだろうな』
 『じゃあちょっと裏切ってやろうかな』とか。

 同じ小人症のタレントに日野利彦さんがいるけれど、日野さんは顔が大きいんだよね。
 だけどマメさんは顔も小さい。子どもの体格なんだよね。」

寺「道頓堀で歩きタバコしてたら、警官に『こら、そこのボク!』って
 叱られたんですよね(笑)」

今「そう(笑) だから、振り向く演技のときに、
 日野さんはインパクトあるけど自分だとインパクトが出ない、
 そこが弱点、とか分析もしてらして。役者としてすごい。

 そういうことって直接触れないとわかんないもんだなー、
 『夜想』も大したことないなー、と(笑)」

寺「いやいや(笑)」



◎フリークスと寺嶋真里
今「ダイアン・アーバス(※アメリカの写真家で、
 フリークスの人々の写真を撮っていた。自殺で生涯を閉じる)なんかも、
 フリークスの人たちの写真を撮ってその人にあげる、までは
 相手との関係でよかったと思うんだ。だけど、
 それを展示したり作品にすることで、行為の性質が変わってしまう。
 それで悩んだ末自殺したんだと思うけど。

 『夜想』の編集過程でそういうことを考えていたんだけど、
 寺嶋さんを見て『あぁ、入っていくんだな』ってことがわかった。
 さらに寺嶋さんは、自分自身も変わってて、より相手に同化するから。
 アーバスみたいに悩まないですよ、自殺しないですよ、この人は(笑)。」

寺「確かに感情移入はするけど(笑)。」

今「マメさんと手つないで歩いてる後ろ姿なんか、『キミらは姉弟か?』って感じだもん。」

寺「マメさんにはもう母性本能をくすぐられまくりで……。
 今日のことでも電話して、メッセージとかありますか?
 って訊いたら一言『あぁ、楽しんでくれ』とだけ(笑)
 マメさん、実家が愛知で、公演でいらしたときなんか
 数日余分に滞在するらしいんですけどね。

 ロウズさんも若い頃名古屋に住んでらしたんですよ。
 メッセージをあずかってます。『今日は別の舞台に立っていますが、
 映像を通して皆様にお会いすることが叶い、また、
 良い思い出の多い鶴舞公園で上映できて光栄です』」

今「名古屋なんだ。『良い思い出』って何だろうね。」

寺「完全に私の妄想ですけど、良い方とデートなさったりしたんじゃないでしょうか。」



◎作品売り込みにかける思い
寺「プレミエ上映のとき、ロウズさんと固く約束したんですよ。
 ベルリン映画祭に出すっていうことと、ペヨトル工房からDVD化するっていう2つ。

 なんですが、1つ目の方は、私がベルリン映画祭のルールを
 知らなかったために、叶わなかったんです。
 ベルリン映画祭みたいな、大きい映画祭ほど
 『開催国で初上映であること』が求められるんですね。
 ところが、その前にドイツの小さい村の映画祭に
 出してしまっていて、『ドイツ国内初上映』という規定を満たせなかったんですよ。

 その小さい村の映画祭っていうのも、公民館で上映するような
 本当に規模の小さいイベントだったんです。
 映画祭開催者があたかも大きなイベントであるかのように言っていて、
 私にその映画祭を紹介してくれた方もそれを鵜呑みにしていて、
 私も鵜呑みにしていて。

 自分の無知もですが、紹介してくれた方も謝ってくれないし、
 作ったあとに悔しい思いをして悲しくなったんです。
 愛知芸術文化センターさんにも顔向けできないですし。

 そんなことがあって、考え方を変えたんです。
 いい作品ってたぶん二通りあって、片方は誰が見ても素晴らしい作品。
 もう一方は目利きの人が見て素晴らしい作品。
 私の作品ってたぶん後者なので、賞には縁遠いんですよ。
 そういう、映画祭や賞には縁遠い作品かもしれないけれど、
 夜想ペヨトルからDVD化し、それで皆に知ってもらおうと決めたんです。」

今「そういう『売り込む姿勢』って今すごく大事で……。
 今少しアニメーションの仕事を手がけてるんだけど、古くていい作品でも、
 放映が終わったら二度と一般の目に留まらなくなるんだよね。
 それらをDVD化し、『アリスが落ちた穴の中』のアートアルバムみたいに
 きれいなパッケージにして、売っているんだけど。

 本もDVDも、発売時がもちろん旬で、うちのデザイナーなんかも、
 デザインに発売時の季節のテイストを盛り込んだりするの。
 だけど、別に他の季節に見ても違和感のないデザインにもなってる。
 本もDVDも売れなくなってきてるから、そういう
 『ずっと持つ』ってことが大事になってくる。
 で、パッケージを開けたら当時の鮮度が出てくるような。

 古いいい作品が埋もれないように、いつ見てもきれいな状態で
 見れるようにしていくのが使命かなと思ってる。
 本はますます新刊の威力がなくなってるんで、
 紙媒体の作品を何らかの形で守っていかなきゃいけないと思う。
 僕は常に前線で作業をするようにしているんだけど、今はそういう波を感じる。」



◎作品と名古屋
今「名古屋では『アリスが落ちた穴の中』人気なんだよね。」

寺「売れてますね。名古屋の洋服屋やアクセサリーショップでも売ってます。」

今「寺嶋さんが営業したからね(笑)。
 寺嶋さん、ビレバン本社に乗り込んだりしてたもんね。
 僕たちなんかだと、ビレバンは無駄だよ、あそこ各店入荷制だから、
 ってハナから諦めてる。だけど、寺嶋さんは本社に行って、
 しかもちゃんと売り込んでる。(※ビックカメラ店にて販売)

 今ってDVDが売れなくなってきてるから、
 メジャー作品でも1000本とかしか売上がなかったりする。
 逆に言うと、1000なら『アリスが落ちた穴の中』の売上数も追いつくんだよね。
 寺嶋さんは、それを身体で売ってるのがすごい。」

寺「文化事業ですから!(笑) 『こういう文化がある』と知らしめる文化事業の一環!
 作品の売り込みでは、なくした青春を取り戻してます。

 青春といえば、私人生がペヨトル工房とリンクしてるんですよ。
 中高生で『夜想』に出会い、作り手として疲れ果てたのが2000年。
 ペヨトル工房が一旦活動を停止したのも2000年なんですよね。」

今「ペヨトル・ファイナルね、名古屋でイベントしたんだけど。
 ゴスロリ流行を背景に復活したのも同じだよね(笑)。
 復活イベントみたいなのも、いつか名古屋でやりたいな。」

 名古屋の書店だと★ちくさ正文館さんもすごく売りあげてくださってて。
 『夜想』コーナーがあって、『アリスが落ちた穴の中』DVDも置いていただいてます。」

寺「今日は、現物の販売はできないんですが、正文館で売っている
 『アリスが落ちた穴の中』の予約受付をしていただけます。
 今日予約してくださった方には、私のサイン入りプレミアムカードを差し上げます。」

今「DVDと同じタイミングでとりあえず作ってあったんだけど、
 ずっと使うタイミングがなかったプレミアムカード。
 やっと日の目を見ることができました(笑)。
 特装版も、手持ちの分はあと10~20個で終わるから、コンビ解消だね(笑)。」



◎新作情報
今「『アリスが落ちた穴の中』コンビはもうすぐ解消だけど、
 今、新作も作ってるんだよね。」

寺「作ってます。」(※★画廊・珈琲 Zaroffの3周年記念映像)

今「っていうか、うち(パラボリカ・ビス)の映像もやってくれてるんだよね。
 (※★ヤン・シュヴァンクマイエル氏への逆襲II《愛をこめて》[10月28日~11月21日]のBGV)
 これがまた、エロティックで、グロテスクで、耽美で。」

寺「2つお渡ししましたけど、あれ、ひとつは新作じゃなくて
 学生時代に作った映像なんですよ(笑)。」

今「あぁ、それで出演してる人が若かったのか(笑)。」



さまざま裏話も飛び出し、今まで聞いた寺嶋監督のトークイベントの中で
もっとも充実していたのではないかと思います。

しゃべりにしゃべった1時間、寺嶋監督・今野さんお疲れ様でした!

続きます ★3/3 上映作品レビュー

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