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紫式子日記

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この市川春子『虫と歌』『25時のバカンス』がすごい!2011

虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)
虫と歌 市川春子作品集 (アフタヌーンKC)市川 春子

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25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)
25時のバカンス 市川春子作品集(2) (アフタヌーンKC)市川 春子

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だいぶ前に出たまんがだし、いまさら私が
紹介とか絶賛とかするまでもないほど
文化系界隈では評価の高い作品なのだが
(たとえば★むらしっと先生の記事なんかを読んでもらえれば
いっそここなんか読まなくてもいい)、
それでも紹介とか絶賛とかせざるをえない。
書かずにはいられない。

まんが読んでここまでがっつんがっつん揺さぶられたの、
なんかすごく久しぶりなんである。
買ったの1週間前なのだが、何やかや毎日読み返してるし
気づくと作品の中のシーンを思い出している。
自分的「このまんががすごい! 2011」、年の瀬も
迫ったタイミングで出てしまった感じ。


異形のものとの交流の物語。
市川春子作品に登場する「異形のもの」、
これはフリークスとか獣人とかそんなもんではない。

月から来たハンサムな宇宙人というのは序の口で、
人の形を与えられた植物や昆虫、
自らを貝殻と化させ、中に深海生物を住まわせた女性、
形態をどんどん人間の子どもに近づけていく鉱物。
人の姿をまとった雷なんてのも登場する。

「ふつうの人間」である(少なくとも自分ではそう思っている)
主人公たちは、非日常のイベントにより彼ら「異形のもの」と出会う。

最初は驚き、戸惑う主人公たちだが、
生活を共にし、次第に彼らの存在に慣れていく。
(「受け入れる」という能動的なものではなく、
 どちらかというと「慣れる」の方が適切に思う。)

「異形のもの」が存在する生活が、日常になる。
(「日常」の中で不意に小さな「非日常」が起こって、
 相手が「異形のもの」だというのを思い出して
 切なくなったりもするのだけど。)
(しかし切なさというのは愛おしさのバリエーションである)

やがて情が湧く。愛になる。
その愛は兄弟愛だったり恋愛だったり百合だったりやおいだったり
兼ねてたりいろいろなのだけども……。

すべての物語は「その後続く日常」の予感を残して終えられる。
幸せな「共生」を続いていく物語もあるし、別れが訪れる物語もある。
後者の場合も、「異形のもの」たちは死に際に別れ際に、
注がれた愛への感謝の言葉を遺す。
主人公たちは彼らを忘れない。
愛しい喪失を抱えて生きていくことを選択する。
相互に捧げられる深い愛。

もうね、2冊両方泣きどおしですよ‼
中でも鉄板号泣確実なのは『日下兄妹』でしょうか。
この文章電車の中で書いたんですが、思い出すだけで泣けてきてヤバかった。



台詞の選び方、伏線の張り方も好きだな。
小さな違和感をともなう、だけどさりげない台詞や
キャラクターの表情が、結末を読むと
「あー、だからあのときこんな言い方したんだー‼」
ってカチッとはまる。

互いへの心情とか想いをあんまりダイレクトに言わないのもいいよね。
「愛の告白」もあるにはあるんだけど、
ワンクッション置いた表現で、解釈がいる。
一方で
「どう解釈しても口説いてんだろこれー」
ってくらいのわかりやすさは保持されてるから、またすごい。

『25時のバカンス』の、姉・乙女の絶望的なまでに激しい恋慕を、
弟・甲太郎が(受けとめる訳じゃないんだけど)
拒まずにいてあげるシーンとか、すごく好き。



あとですね、これもいろんな人がいろんなところで
語ってることなんですが、 え ろ い んだ。

細めにデフォルトされた人体(ヒトじゃないケースも多いけど)は
それだけでエロティックだし、特に『25時のバカンス』
(すみません大好きなんです)の、甲太郎が乙女に耳打ちするシーンとか、
貝殻になった乙女の身体が割れていないか確認するために
甲太郎が背中を探るシーンとか、いろいろやばい。

それまで受け身だった甲太郎が、決意のある目で乙女を見て、
ぐいぐい腕引っ張ってく(しかもその後なにげに手を
「恋人つなぎ」する)シーンとか
「セックス! セックス‼」
っておーさわぎしてしまった……。無いんだけどね、濡れ場。



はゎー、いいまんがに出会ったものです。
読もうと思ったきっかけはTwitterでした、
インターネッツには様々な出会いが転がってますね。

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