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紫式子日記

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『自由恋愛』岩井志麻子


自由恋愛
自由恋愛




舞台は大正時代。

美しく、周囲に愛されて贅沢に育った明子と、抑圧的な父母の下で女としての魅力を用いることなく生きてきた清子。

物語はそれぞれの一人称で語られていきます。

ストーリーとしては、明子の夫と清子が通じ、さらに妊娠したことで妻妾の関係が逆転する、しかし清子は子供を産んでしばらくしてから行方をくらまして……という、「いかにも」なメロドラマ的筋立て。



ですが、目を背けがたいまで「負の感情」を浮き彫りにする手法が、この物語を「読ませる」ものにしています。

物語の冒頭で生々しく描かれる、無邪気なお節介がひとを傷つけるという皮肉、そしてもう一方が舐める屈辱感、或いは、友人の亭主を「寝どる」清子の感じる小気味よさ、明子の感じる絶望など。

それら人物の感情の機微がさりげなく、それゆえこの上ない明確さを以て描写されています。



また、文庫版あとがきにより説かれる、「時代との対決」という切り口が、この物語をより正確に解釈させてくれます。

昭和末期〜大正時代という、「自由恋愛」「職業婦人」など、「先進的」な考え方が生じた時代における、「保守的」な考え方との対決。

明子と清子は、表面上は対立していましたが、2人とも共に夫・優一郎までも付き従う、姑、もっと言うと姑に代表される過去の考え方と闘っていたのではないか、という解釈です。

この物語は、姑の望むまま「跡継ぎ製造機」となることを拒んだ清子しかり、男の都合が良いままになることを許容せず自分の足で立った明子しかり、確かに「前時代との対決」そしてそこから導かれる「自立」という結果を描いているんですよね。

偉いなぁ、誰が書いてるんだ、と思ったら、やっぱり斎藤美奈子だった。



舞台こそ大正時代ですが、なかなかどうして、「今」にも投影できる仕掛けになっています。

だからこそ岩井志麻子も、これを物語として描いたんだろうけどね。

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