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紫式子日記

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『Girl Friday』やまだないと


Girl Friday
Girl Friday




やまだないと作品の中でも、エグ度が高い一作。

この人の場合エグい話は短編に多いんだけど、これは長編なのでね。



一人の男性が、自分の人生を振り返るという形式をとっています。

主人公・O崎は、幼少の頃から父親にまるで関心を持たれていないことを重圧に感じていました。

男に「男として欠陥品」として扱われている、と。

そして高校生のとき(?)、その清潔さに憧れていた同級生・K子が、父親と関係しているところを目撃してしまい、その劣等感を確かなものとしてしまいます。

そのときからO崎は「今の自分」になり、「たった一匹の蝶」を探し続けていました。

中年になったとき、K子の面影を持つ一人の少女と出会い、自分が探し続けていた「蝶」の正体を自覚しますが、それは「決して手に入れることが出来ない」ものでした。

それでもO崎は「探し続け」、晩年に「いい人生だったな」と口にするのです。



……って書くと、「なぁんだオヤジの自己マン人生記か」って感じかもしれませんが。

そこはそれ、やまだないとですから。

オトコから見た女性〔少女〕観」「オンナから見た女性〔少女〕観」、および「オトコから見た男性〔少年〕観」「オンナから見た男性〔少年〕観」、を上手ぁく対比させ、「決してひとつになれないかなしみ」のようなものを描き出しています。

友だちに『西荻夫婦』貸したら、「これ読むとなんか哀しくなるぅ」って言われたの思い出しました。

やはり、根幹はそこなのかな、と思いますね。



また、全編フルカラー(豪華!)なんですが、男たちは(性器を除いて)白黒なのに、女たちは生々しく(影に緑とか使って! 油絵みたい)彩色されているのが、いろいろ「考えさせて」くれます・笑。

やまだないとの創作姿勢・視線を知ることの出来る巻末の対談も嬉しい。

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『サプリ』おかざき真里


サプリ 1 (1)
サプリ 1 (1)




ヴィレバンの「『働きマン』が働くオンナの栄養ドリンクなら、『サプリ』はサプリメントだ!」みたいなポップに釣られて、買ってみた。



なるほど、『働きマン』同様、こちらも仕事に情熱を燃やすあまり恋愛をおろそかにしがちな女性の物語。

ただしこちらは広告代理店勤務だったり、恋愛と疎遠になりきっていないというか……きちんと「恋愛して」いたり、という違いがあります。

7年間付き合って、半同棲状態だった恋人に「俺より仕事の方を大事にするから」と別れを告げられるのですが、それがむしろきっかけとなって新しい恋愛が舞い込んでくるんですね。

恋愛シーンに割かれているページ分量も多め。

「しんみり」「しんしん」な心情がしっとり描かれています。

ただ、その分お仕事シーンがあまり描き込まれておらず、「取材不足?」と疑ってしまったりなんかして。

なんだか、せっかく働く女を描いていながら、少女まんがのラブコメを脱しきっていないという感じ。

ん〜、これは青年誌(『働きマン』はモーニング)or女性誌(『サプリ』はフィールヤング)の違いなんでしょうかねぇ。。。



私好みではないかな、という点で星3つです。

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『恋愛譚』楠本まき


皆様、楠本まき作品のお目見えですよ。


恋愛譚
恋愛譚





これ、立ち読みはしてあったんですよね。

ただ、当時は今よりお金が無いようなレヴェルで、敢え無く看過したのですけれども。

えぇ、この度ご縁がありまして。



運命の恋人であるはずなのに、すれ違い、互いに気づかないばかりで出会うことの無い少女・新月と少年・猫目丸。

巻末の章で2人が運命の恋人であるにも拘らず、出会わなかった理由が語られ……そして、2人は出会わないままこの本は(そして恐らく世界は)終わります。



これは、楠本作品の中でも「恋愛」というものがラジカルに語られていて好き。

既成の「恋愛」という概念に囚われていない、強い言葉を使えば所謂「恋愛」を冒涜する「恋愛」譚。

なぜ新月と猫目丸の相性が良いかって、新月は「愛玩されるのが好きで、哀願されるのも好き」、猫目丸は「愛玩するのが好きで、哀願するのも悪くないと思っている」からなんですね。

新月は人格なんか認めてほしくないと思ってるし、猫目丸は人格なんか認めるつもりはない。

そんな2人の物語に『恋愛譚』と題するアイロニーっぷり。

楠本まき、恐るべしですよ。

あと、巻末章、種明かしの頁で繰り広げられる、「雪白」「灰かぶり」「赤頭巾」らのスレた会話が絶妙。



 「あなたこそ王子様は関係ないんじゃないの 赤頭巾。」

 「あんたの目的は狼に喰われりゃ達成なんでしょ?」


 「ええまあね」

 「私は肉欲担当だから。」




何が怖いって、幻想的な全編の中で、巻末のその会話だけがリアルな生々しさを持ってるってことだよ……女の子って怖ぁい・笑。

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『不思議な少年』山下和美


前も取り上げたけど、3巻手に入ったんで改めて。



不思議な少年 (3)
不思議な少年 (3)




永遠の命を持ち、姿を自由に変えられ、時空を自在に移動できる不思議な少年が主人公……というか、各々の人物の生活に、傍観しつつ参加していきます。

そして彼が様々な時代・様々な場所で様々な人間ドラマを見て見出していく人類共通の愚かさと尊さが描かれていくまんがです。

特に3巻はそのことが言葉に出されている「まとめページ」的なパートがあったから、そんな主題が浮き彫りになっていましたね。



しかし相変わらず山下和美は上手いですね。

「ええっ!?」って疑いたくなるような展開と、ハッピーでもアンハッピーでも納得してしまう結末と、何より魅力的なキャラクターたち。

愛に満ちてます、愛に



ところでこのまんが、全貌を現すにしたがってなんだか手塚治虫の『火の鳥』めいてきたかも。

『火の鳥』の方は人間が「ちっぽけな」存在であることを、より強調しているけれど。



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『スパイシー・カフェガール』深谷陽


スパイシー・カフェガール
スパイシー・カフェガール




本日の立ち読み。

やまだないと読みに行ったのに「ふ」で始まる作家さんのまんが手に取ってるって何のこっちゃ。

装丁の妙ですね。装丁が心憎い、これ。



で、中身はもっと心憎い。

「食」に関しては自信がある主人公は、ふらりと立ち寄ったタイ料理屋で、唐突に厨房要員にされる。

そこで働く可愛い韓国人ウェイトレスとの初々しいロマンスと、「どう見ても用心棒、でも料理の味は繊細」なシェフ故と思われる国際的陰謀の影。

でも、主人公は料理の腕を磨き続ける……閉店後の厨房で、帰宅後のアパートで。

どんなに陰謀の匂いが渦巻いて、それに巻き込まれても、(何が起こっているのか理解できないゆえ)りちぎに日々を料理して過ごしていく、主人公のほのぼのした様が微笑ましいです。

終わり方も「やってくれるな〜」という感じ。

それはそれは、スパイスを効かせた深みのある味わいのタイ料理のようなまんがです……

って、私タイ料理とか食えないんだけどもね; からいのムリ;;;



画風も、ちょっと暑苦しいかな? と最初は思えたけど、読み終えると、このストーリーにとても合っていた気がする。

久しぶりに、粋なストーリーテラーを知った気分です。

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