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紫式子日記

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『恋愛譚』楠本まき


皆様、楠本まき作品のお目見えですよ。


恋愛譚
恋愛譚





これ、立ち読みはしてあったんですよね。

ただ、当時は今よりお金が無いようなレヴェルで、敢え無く看過したのですけれども。

えぇ、この度ご縁がありまして。



運命の恋人であるはずなのに、すれ違い、互いに気づかないばかりで出会うことの無い少女・新月と少年・猫目丸。

巻末の章で2人が運命の恋人であるにも拘らず、出会わなかった理由が語られ……そして、2人は出会わないままこの本は(そして恐らく世界は)終わります。



これは、楠本作品の中でも「恋愛」というものがラジカルに語られていて好き。

既成の「恋愛」という概念に囚われていない、強い言葉を使えば所謂「恋愛」を冒涜する「恋愛」譚。

なぜ新月と猫目丸の相性が良いかって、新月は「愛玩されるのが好きで、哀願されるのも好き」、猫目丸は「愛玩するのが好きで、哀願するのも悪くないと思っている」からなんですね。

新月は人格なんか認めてほしくないと思ってるし、猫目丸は人格なんか認めるつもりはない。

そんな2人の物語に『恋愛譚』と題するアイロニーっぷり。

楠本まき、恐るべしですよ。

あと、巻末章、種明かしの頁で繰り広げられる、「雪白」「灰かぶり」「赤頭巾」らのスレた会話が絶妙。



 「あなたこそ王子様は関係ないんじゃないの 赤頭巾。」

 「あんたの目的は狼に喰われりゃ達成なんでしょ?」


 「ええまあね」

 「私は肉欲担当だから。」




何が怖いって、幻想的な全編の中で、巻末のその会話だけがリアルな生々しさを持ってるってことだよ……女の子って怖ぁい・笑。

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