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紫式子日記

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『Strawberry shortcakes』魚喃キリコ


Strawberry shortcakes
Strawberry shortcakes



なななんきりこ(と、あえてひらがな表記したい)は、好きなまんがのジャンル上、なまえばかりは目にしていたのだけれど(でも耳にはしなかったから読み方を知ったのは最近なのだけれど)マトモに読んだことはありませんでちた。

映画化されるらしい、しかも『ジョゼ虎』の池脇千鶴が出るらしい、つことでちゃんと拝読せねば!! と思い立ち、正座して読んでみました(誇張表現)。



感想。

痛。

なんつーか、感情がナマなのだ。「ストロベリーショートケイクス」なだけに。

特に「クる」のが、一途な片想いの相手・菊地とは先に進めないデリヘル嬢・秋代のエピソード。

「ああかみさま 私あの人が好き あの人が好き」

「菊地に会える 菊地に会える 菊地に会える 菊地に会える」

なんてモノローグも痛切だし、菊地に会う口実として「実家から野菜が送られてきた」なんて言いつつ、行きがけに八百屋でトマトとキュウリを買っていく様も、けなげで切ない。

痛い。痛い。

才能ゆえに孤立し、食べては吐くを繰り返す塔子も、塔子や田舎への鬱屈した思いを払拭できないまま男に依存するちひろも、みんな痛い。痛い。

そんな中、恋がしたいと言いつつ何も起こらない日常を過ごす里子のエピソードは、ほっとする箸休めになってるかも。



しかし、誰のエピソードにしたってリアル。生々しい、痛々しい。

なななんきりこ、すっげぇな。

いいです。皆さんもお早めにお召し上がりください。



画風、クセがありますが好きです。

切り絵みたいなの。

線が太くて、白黒がはっきり付いている。

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『東京湾景』吉田修一


東京湾景
東京湾景


なんか……

「え、これ吉田修一!?」

って感じなんだけど、私なんかは。

なんたって、ディテール細かすぎ

この人の他の作品て、こんなに地名とか風景描写とか明確だったっけか。

これはやっぱりアレか、自身の経験に基づいているからか。



とはいえ「吉田修一」ってのを手で隠して読めば、けっこうスキなタイプの作品でした。

過去の恋に傷ついていて、出会い系サイトで出会った2人が、本気の恋を始める勇気を持てないままに本気になり、自分たちの感情に戸惑っていく……というおはなし。

やっぱこういう「伸るか反るか!?」「行っとくかやめとくか!??」みたいなもどかしい駆け引きを言葉にしてくれるから、小説ってありがたいです。

終盤の

「信じようとは思うのに、なかなかできないっていうか……」

という亮介の台詞なんか、みんな思ってる。

当然のように思ってる。

でも、当然すぎるし口に出したら元も子もないしで、思ってないことにしている。

逆に、それを言えちゃう仲になった、亮介と美緒を羨ましく思えます。



あと好きなのは、これも亮介の台詞で

「だから、好きは好き。……いろいろないよ」

物語をすべて読みきってからこの台詞を見返したら、

「そうか、そういうことなのか」

と妙に腑に落ちて、またなんだか気分があったかくなりました。

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『花よりもなほ』


花よりもなほ 愛蔵版 (初回限定生産)
花よりもなほ 愛蔵版 (初回限定生産)



『誰も知らない』とコレとで、是枝監督2本立て。

この監督もうちのOBらしいですね。

世の中OBだらけ。



『誰も知らない』はBGMも台詞も少なめなんだけど、こちらは調子のよいBGM、落語のような軽快な脚本が特徴。

私はこういう方が好み。

OPのタイトルが水彩画みたいに浮き上がってくる効果、そこからして好みだった。

台詞回しの時代考証とか、

「江戸時代にその単語、そーいう意味で使ってたの?」

ってところはありますが、コメディ性を活かしているということでよしとしよう。



キャスティングの妙が凄い。

これ、主役に岡田くんを持ってきたってのが、正解だと思うけど不思議。

キャラクター設定だけ挙げれば、他の若手俳優でもいい気がする。

むしろ、

「そこで岡田くん!?」

とすら思う。

けれど、実際話を観ると、宗左の弱さ・優しさ・(武士のものではない、男としての)強さに、岡田くんはピッタリはまっている。

うぅん、不思議。

宮沢りえのおさえはザ・はまり役! って感じでしたね。

着物の子連れ未亡人だなんて。

この他、脇役もゴーカ。

特に『誰も知らない』と並べて観ると、キム兄&寺島進の厚みが冴えます。

最近寺島進好き。なんでだろ



そして、話がいい。

とんちの利いた人情もの・ラブコメ込みといったところで、まぁ『お江戸でござる』って言ったらアレだけど。

本筋である宗左のストーリーは胸温まって腑に落ちるものだし、おさえの亡夫のエピソードも、彼女自身ではなく息子の進之助を通してわかっていく分、痛ましい。

うん、コメディタッチだけど、いい話ですよ。



宗左の出身が私の地元だったのがちょっとうれしい。

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『誰も知らない』


誰も知らない
誰も知らない



映画復帰第1弾。

相変わらず早稲田松竹。



えっらい話題をかっさらった作品ですが、実は初見でした。

確かに、凄い映画だった。

「凄い」ってあれね、漢字ね。「スゴい」てカタカナじゃなくてね。

もう、壮絶。



明と京子、それぞれの母親への愛憎模様が苦しい。

明確に台詞にされず、小道具(マニキュア・クローゼット)で示される辺りが、余計に。



何より映像に圧倒される。

鮮やかな色彩で、嗅覚まで刺激されるよう。

水道が止まってからは、子どもたちの体臭までもが嗅ぎ取れる。

苦しい。息苦しい。



YOUのダメ母演技も凄かった。予想以上だった。

YOU自身、けい子みたいな女の葛藤をちゃんと知ってるんだな。

(本当に離婚しちゃったし。)



しかしなぜか入り込めはしなかった。

柳楽くんの演技が上手すぎたのだろう。。。

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ベルギー王立美術館展


ベルギー王立美術館展行きましたよ。

めちゃめちゃ穏やかな陽気だった木曜日。



当初の目的はマグリット・デルヴォー、余力があったらアンソールも悪くないよなぁという、モロ近代作品狙いだったのですが、大きなマチガイでした。

古典作品もスッゴいの来てます。

というか、私が愛してやまない近代絵画も、ちゃんとその土地の美術的伝統の上に成り立っているのね。ということを学ばせていただきました。





まず会場に入ると、公開記念動画が流れています。

内容は、ベルギー王立美術館での所蔵作品の維持・修復の模様と、美術館を訪れる人々の様子。

どこの美術館でもやっていることなのですが、こうやって改めて映像で見せられると、作品への愛を感じさせられます。

これから観る作品にも敬意を払おうと、居住まいを正されました。





コンセプトによるセクション分けはなされておらず、作品は時代順に並んでいます。

今回も気に入った作品メモでお送りします。



◎ブリューゲル(子)『婚礼の踊り』

朱色がすごく鮮やか。

教科書で何度も観た絵だけれど、実物は本当に表情が豊か!

表現がマンガ的なんですよね。で、すごく緻密。

垢抜けた印象はない絵ですが、観ていてすごく楽しいです。

1人1人の表情を、細かくチェックしてみたい感じ。



◎ピーテル・ブリューゲル(父)『イカロスの墜落』

ベルギーから出るのは初めてというこの展示の目玉。

題名が題名だから、墜落するまさにその場面が大写しなのかと思ったら、一見漁村の日常風景。

はるか眼下に海が広がっていて、そこにぽちゃーんと落ちている。イカロス。

死もまた、日常。

(子)の『鳥罠のある風景』といい、でもそんな、改めて言わなくたって、、、。ってくらい、諧謔。

フランドルの静物画も放ってるメッセージは似てる、よね。



◎ヤーコブ・ヨルダーンス『飲む王様』

車内広告に使われていたこの絵。

王室の様子かと思っていたら、クリスマスの「豆の王様」なのですね。。。

印刷物にすら感じたけど、やっぱり実物は生命感・生々しさがスゴい。

決して美しくはないけれど、熱狂・狂乱が時空を超えて伝わってくる感じ。



◎ヤーコブ・ファン・スワーネンブルフ『地獄のアイネイアス』

細かい・細かい・細かい……。

ボスの『天地創造』「地獄」みたいな色彩・雰囲気なんだけど、とにかく描きこみが細かい・細かい・細かい……。

虫眼鏡使いたくなりました。

ブリューゲル親子といい、こういう細かさはこの地域の画家の十八番なのかしらね。

こう、絵の内部へ内部へ、自分の心象へ心象へもぐりこんでいく感じ。



◎素描

↑みたいなことを考えていたら、古典素描の展示が。

油絵ですら細かい人たちに、ペンなんて持たせたら何をかいわんやです。

頭痛とめまいを催しました。



◎フランソワ・ジョゼフ・ナヴェス『砂漠のハガルとイシマエル』

明確な物語と対象を扱ってはいるのですが、何もない空と砂漠にシュールっぽさを感じます。

特に空には、マグリットがのぞいた。

そうか、マグリットの空も精神世界的な作風も、ベルギーの伝統だったんだ。



◎フェリシアン・ロップスの作品

『娼婦政治家』以外の作品、初めてかも? 「ベルギー象徴派展」にもあったか。

この人は上手いですねー。

女の汚らしさ・醜さ、人の心の意地汚さ・いやらしさ、どうしてこんなに生々しく描けるんでしょう?



◎ジェームズ・アンソール『怒れる仮面』

フランドル画家の諧謔精神を引き継いだのはロップスとこの人ってことなのかな。

構図がシンプルだから勘違いしてたけど、これ、実物は案外大きいのね。



◎ジャン・デルヴィル&クザヴィエ・メルリ

知らない画家さんだけれど、象徴主義ちっくで好みだったー。



◎ルネ・マグリット『光の帝国』

デザート的に、シメはコレで。

やっぱりこの人の青空は好きだな。

うそ臭い、だけどリアル。

でも実際の空を見ると、マグリットの絵と同じくらいうそ臭かったりする。

特に「光の帝国」シリーズは画力が安定してからの作品群なので、絵の巧拙を気にせずにふしぎワールドに入り込め、いいですねぃ。





集客力のある有名絵画が来ているわけではありませんが、展示全体にチャーミングさを感じます。

感銘を受けるというより、いとしさを覚える

そういう展示でした。

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