2006/09/25 Category : Books 『東京湾景』吉田修一 東京湾景なんか……「え、これ吉田修一!?」って感じなんだけど、私なんかは。なんたって、ディテール細かすぎ。この人の他の作品て、こんなに地名とか風景描写とか明確だったっけか。これはやっぱりアレか、自身の経験に基づいているからか。とはいえ「吉田修一」ってのを手で隠して読めば、けっこうスキなタイプの作品でした。過去の恋に傷ついていて、出会い系サイトで出会った2人が、本気の恋を始める勇気を持てないままに本気になり、自分たちの感情に戸惑っていく……というおはなし。やっぱこういう「伸るか反るか!?」「行っとくかやめとくか!??」みたいなもどかしい駆け引きを言葉にしてくれるから、小説ってありがたいです。終盤の「信じようとは思うのに、なかなかできないっていうか……」という亮介の台詞なんか、みんな思ってる。当然のように思ってる。でも、当然すぎるし口に出したら元も子もないしで、思ってないことにしている。逆に、それを言えちゃう仲になった、亮介と美緒を羨ましく思えます。あと好きなのは、これも亮介の台詞で「だから、好きは好き。……いろいろないよ」物語をすべて読みきってからこの台詞を見返したら、「そうか、そういうことなのか」と妙に腑に落ちて、またなんだか気分があったかくなりました。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword