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紫式子日記

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『うつくしい子ども』石田衣良


うつくしい子ども
うつくしい子ども



石田衣良は恋愛小説から入ったわたくし、

「あれー、石田衣良ってこういうの書くんだー」

という印象。



読みやすい文体は確かに彼のものですね。

正味2〜3時間で一気に読めました。

ただ、オリジナリティをあまり感じないというか。

「夜の王子」を殺さねばいけないと思い詰めている場面は、田口ランディ『アンテナ』で主人公が妹を殺さねばいけないと考えているところとダブるし、比喩の使い方は村上春樹っぽい。

上手いこと言うとは思いましたけれどね。

やるせなさの描写で、

「それがどんな気持ちだったか、想像してほしい。

 それを百倍にするとぼくの気持ちだ。」


とか、

「みんな、なにもない振りをするのが、とても上手なんだ。」

とか。



あとは何と言っても、この人ならではの視線のナナメっぷりだなー。

シビれますね!!

そもそもが《少年犯罪の犯人の家族》という、ほとんど誰も触れない《第二の被害者》を主人公にしているし、マスコミ側からの視線も交差する。

加えて「少年犯罪」自体への目線ね。

そのテの犯罪が起こるたび家庭環境のせいだの、地域社会のせいだのという言説が流れるけれど、それをさりげなく、だけど的確に批判する。

まさに主人公がしているとおり、自転車で風を切って、風景が流れるのを見ているような感触で。

うん、日本の政治家はもっと石田衣良のハナシを聞いた方が良いよ。

現総理なんか、髪型も似てるし、ねぇ。。。

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『時計じかけのオレンジ』


時計じかけのオレンジ
時計じかけのオレンジ


1日2本キューブリック見ると、中枢神経ラリるぜ。

いやもう最高にホラーショーな気分ですよ。



改めまして。

「今さら観る名作」シリーズ、3作目はこちらでございます。



『雪国』の例を挙げるまでもなく、小説は最初の1文でその作品の世界観を語り、読み手をいざなわなきゃいけませんが、……

キューブリックはこの映画でソレをやったね!

アレックスのどアップからのズーム・アウト。

そして、画面に広がるミルク・バーのサイケデリックなデザイン。

なんて言うかもう、このシーンだけで短編映画として成り立つよなぁって。

アレックスたちの衣装も「ありそうでない」奇抜さだしね〜。

袖口の目玉がステキ。



もちろんソレじゃ終わらないんだけれどね。

近未来的・ミッドセンチュリーちっくなインテリアも映されつつ、作品のキッチリ半分は古典的な風景・ベーシックな衣装。

キューブリックの作品には相反するものが同居するらしい。

時間の感覚狂ったりするのも、そのせいかな。



ストーリーもえげつなく、あんまりにもアレで……ねぇ。

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『2001年宇宙の旅』


2001年宇宙の旅
2001年宇宙の旅


タイトルを聞いただけで、『ツァラトゥストラはかく語りき』が脳内で流れる。



こんばんは、「今さら観る名作」がシリーズ化しつつあります。

『紫式子日記』に、本日もよくぞおいでくださいました。



で、やっと観ました。

人類の祖先が骸骨を見つめる場面なんか、

「おぉ、これか!!」

と、まるで有名人を見た田舎者のような気分になりました。



『EYES WIDE SHUT』でもそうだったのですけれど、キューブリック作品ていうのは観ていて時間感覚が狂いますね。

視点・視線の使い方なんだよな。

カメラをジッと止めているシーンと、慌しく移動させているシーンのメリハリがハッキリしている。

(ヴィム・ベンダースなんかは、ずっとカメラを止めているタイプなんだ、たぶん。)



あとはキューブリック哲学!!

なんで「人類の夜明け」にあんなに時間を割いたの?

ラストのエッシャーの絵みたいなシーンは何を意味しているの?

死の発見 + 道具の発見 → 道具の発達 + 道具自身による死の発見 → その先にあるのは何?
この他、諸々の問いが私たち観客の解釈に委ねられているかと思うと、頭痛がします。

答えは、わかったような気になったと思ったら途端にわからなくなる。




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『未来世紀ブラジル』


未来世紀ブラジル スペシャルエディション
未来世紀ブラジル スペシャルエディション


ご好評をいただいております、「今さら観る名作」シリーズで御座居ます。

今夜は此方、『未来世紀ブラジル』。

なぜか何かしら、『ブレード・ランナー』のような陰鬱な雰囲気を想像していたのですが、存外コメディタッチなのですね。

それもブラックな。



ご覧になっていない方のために申し上げると、情報社会への風刺になっているのです。

些細なことでもいちいち書類を書かねばならない、個人情報が隅々まで管理された近未来が舞台。

上流階級のファッション・官公の建築物などはアール・デコ調の華やかさを湛えているが、下層市民の生活は劣悪……という、「見た目はキレイ、中はキタナイ」社会が描かれています。

政府の管理への反発で、テロも多発しているという設定。

ってこれ、2000年代への警告だったんじゃないの! あるイミ黙示録なんじゃないの!!

みたいな世界観です。



「法規制はむしろ『犯罪者』を増やす」というジレンマが、画面を飛び交う書類群によって示されます。

主人公・サムが、結局空想の世界に逃げ込まざるをえなくなるという残酷な夢オチによって、そのメッセージは決定的になっている、気がするのですが。



コミカルな演出は観ていて面白いんだけど、如何せんメッセージが重くて、2度見るのはためらわれる映画……。

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『シザーハンズ』


シザーハンズ 特別編
シザーハンズ 特別編


いやぁ、ジョニー・デップって本当にすごいんですねぇ(水野晴郎風)。

如何にも人造人間っぽい、ぎこちない動き・喋りも上手かったけど、

嫉妬に駆られたときの凄み!

すばらしかった。



それからティム・バートンの演出。

『チョコレート工場』とコレの2作しか観ていないけれど、彼は色彩の魔術師なのだなぁ、と。

エドワードが暮らす城の前庭のまばゆさ、それと対照的な城内のねずみ色。

一転、郊外住宅地のわざとらしいパステルカラー、夜の闇。

ポップさばかりが強調される監督ですが、陰鬱なものも描ける(むしろそっちのが本領?)感性の幅広さに、感心することしきりです。



ストーリーも深いし!

「身体障害者(今使用禁止語?)」「アウトサイダー」などに対して私たちが述べる言説、その身勝手さをありありと露呈しているんですよね。

そのような色眼鏡ナシでエドワードのことを見られるのは、結局彼に真摯な恋をしたキムだけだった、そのことが泣かせます。

オチがすごかったねー。

こういう静かだけど壮絶な恋の物語って、結構クる。

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