2006/05/06 Category : Movies 『憂国』(映画そのものについて) 憂國夫人の死後、三島邸の茶箱からフィルムが発見されたと大騒ぎになった「幻の映画」、『憂国』。DVDが発売されると共に、現在キネカ大森で行なわれている「三島由紀夫映画祭2006」でも上映されています。そちらを観てまいりました。キネカ大森は大森のSEIYU5階という意外な立地にある映画館。でもサイト観てみたらテアトル系の映画館だった。妙に納得。テアトル池袋で上映される『LOVEHOTELS』を観たいと思っていたんだ、ちょうど。さほど広くない劇場内は、7割満席といった感じ。平均年齢は高めかしらん。1人で来ている30〜40代男性が比較的目に付いた印象。一緒に行った友人と持ち寄った三島由紀夫関連資料を読みつつ待っていたら、照明が落とされる。物憂げな『トリスタンとイゾルデ』が流れ出し、スクリーンに映った白手袋が巻物を広げはじめた。 「2人は一緒に死ぬ決意をしたことで夫婦の絆を再確認し、新婚初夜のような気分になった……」といったことが書かれている。あらすじを読ませおわると、能の舞台を模したセットがスクリーンに現れる。壁にはただ「至誠」と大きく書かれた掛け軸があるだけ。ロングショットばかりでなく、顔のアップ・濡れ場での接写など、カメラワークも巧みで退屈しない。(そして、その間もずっと流れる『トリスタンとイゾルデ』。)夫婦の最後の交合が終わり、「皇軍萬歳」の遺書をしたためる。そしていよいよ中尉の切腹シーンになる。刀を取り、軍服をはだけ、文字通り「腹を決める」……その間の「タメ」の長いこと!「臓物も出る」と聞いていたので、その前フリでスクリーンから目を逸らしそうになり……。全体で30分弱の映画なのに、ここだけで1時間くらい消耗したような気分になった。やっと斬りつけた。モノクロ映画なのに、血液だけ赤黒くぬめって見えた。じっくり、じっくり、中尉が死にゆく過程を舐めるように撮っている。そして、声も表情もなくただ涙を流す夫人のショットが挟まれる。中尉が死に果て、今度は夫人の番だ。「新婚初夜の気分」を布石としてだろう、夫人は白無垢を着ている。(そのため、中尉の血液を浴びていることも目に見てわかるようになっている。)彼女は一旦自室に下がり、死に化粧をする。そして中尉の骸に接吻をし、後を追う。重なるように倒れる2人の亡骸をラストショットとして、エンドマーク。『トリスタンとイゾルデ』も、刃傷を負ったトリスタンの上に、イゾルデが重なって死ぬシーンで終わる。陰鬱な雰囲気に加え、そのストーリーをなぞらえる意味でも『トリスタンとイゾルデ』がセレクトされたのだ。観た後はどっと疲れ、頭痛を催していたほど。友人と「1人で観に来た人たちって、1人でコレ消化しなきゃいけないんだよねー……」なんてお節介を言いながら移動。近くの坐・和民にて「まとめの会」をする。その内容は別の記事で。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword