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紫式子日記

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「山本六三展 -聖なるエロス-」図録



「山本六三展 -聖なるエロス-」という、何ともそそる企画が
Bunkamuraで行なわれていまして、えぇもう終わってしまいましたし、
私は観ることはできなかったのですけれど……。

けれど! けれど!! その図録が!! Webで手に入ります、ありがとうBunkamura!!
Bunkamura オンライン市場「山本六三展-聖なるエロス-」販売ページ



カラー作品だと気付かなかったんだけど、銅版画を見て
「あぁ、澁澤が好きだったあの画家か!!」
と納得。

驚いた、日本人だと思ってなかった、フランス人か何かだと思ってた……。
たぶんピエール・モリニエとごっちゃになってたんだと思う……。
失礼ながら名前の読み方も知らなかったしね。(むつみ って読むんだよ)

澁澤龍彦絡みの資料だと2~3点しか見れませんが、
この図録買えばごっそり1冊まるごと山本六三なので、じっくり堪能できます。



いいよねぇ、華奢な体型に硬そうな肉質、東洋人の感性にグッとくる中性性表現だよね。
クラーナハ(クラナッハ)の描く思春期の少女みたいな裸婦もいいけれど、
あのムッチリ張った肉の感じはやっぱアングロサクソンの女子の描写だよね。なんて思う。

病的な身体表現に、人物たちの妖艶な視線、神経質的に細い線から生まれる薄暗さ。
そこに描かれる扇情的なポーズの少女たち、濡れ場。これはいい暗エロ!

ビアズリーみたいな「オフザケ」も無くて(笑)、ひたすら耽美、ひたすら耽溺。
2001年に61歳で逝去かー、渋澤先生、あんまり沢山連れていかないでください……。

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『禁色』三島由紀夫



これもねぇ……。
だいぶ前に読み終えたんだけど、素晴らしすぎて感想書くのもおこがましくてねぇ……。
延び延びになっていました……。



なんつったって! にほんごが!! すばらしい、美しすぎる!!
多少抵抗がある内容でもすいすい読ませて、しかも各文が印象にも残る、
三島由紀夫の日本語力って本当にすごい。再認識した。


そしてストーリーがね……。
俊輔に見出され、「見られる存在」としての自分に目覚めた悠一が、
ある出来事をきっかけに「見る存在」に生まれ変わる。
一方、悠一を道具のように使おうとしていた俊輔は、
自分がそれ以上の感情を悠一に対して抱き始めたことに気付く。

悠一の変化は、身勝手で高慢な処女が
自分のことを気にしない母性を身に着けるかのようだし、
俊輔の変化も、ひたすらに他者を憎んでいる傲慢な童貞が筆下ろしを経て、
きちんと相手をいち人格として見られるようになるかのよう。


これを「誰も幸せにならない物語」って書いてる人もいたけど、私は違うと思う。
悠一、俊輔とも、自分を生きづらく不必要な自意識が削げて、
その状態で物語を終えることができて、幸せじゃない、なんて思う。

その「幸せ」が果たされなかったのが『豊饒の海 天人五衰』の結末で、
まぁそうなると三島本人は最終的には「誰も幸せにならない」を選んだのかなー、とかね。

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「アヴァンギャルド・チャイナ―〈中国当代美術〉二十年―」展@愛知県美術館



これも「だまし絵」と同じ日に観に行ったんだけど、
「どうしよう……スゲー感想書きにくいぞ……」
と思って流しに流して結局2週間経って今日になった、
っていうそういう経緯があるんだけれど。

「だまし絵」と全然違って、こっちはすごーく観る人を選ぶ展示。
客足も、「だまし絵」が激混みだったのに対してこっちはガラガラでした。
ゆっくり観れたよ

どう人を選ぶかって、まず「グロテスク」。
内臓とか血液がどうとかじゃなくて(イヤ血液が出てくる映像作品もあるんだけど)、
「奇怪」っていう意味での「グロテスク」ね。

そして「現代美術の見方」といいますか、時代的背景ですとか
作品を通して既存の価値観が批判されている、そういうことを
踏まえて観ないと、たぶんあんまり楽しめない。

いえ、私はけっこう楽しみましたけどね……。

あ、あと中国って伝統的に原色・ド派手・ダイナミックな文化があるけど、
それを受け継いでるなって感じは、確かにある。インパクト強烈。



これは展示のキャプションで知ったんだけれど、中国現代美術の面白いところは、
文革終わって鎖国状態を解いたとき、ダダとかシュールとか、
ヨーロッパでは時系列で段階的に発生してきた美術のジャンルが、一度に流入したこと。
そのため「表現の自由さ」を求めたアーティストたちには、選択肢が沢山あったこと。

それゆえ系統立っていない、いびつなカオス状態が生まれていて、
それが一種の「気持ち悪さ」も感じさせるし、「面白さ」でもある。

なんたって中国は「日本が40年かけて遂げた発展を20年で遂げようとしている」
なんて言われる国で、そこに生きる人々の心情が「激動」じゃない訳ないし、
それはそのままその土地で生まれる作品にも言えることなのだ。と思う。



いろいろな作家がいろいろな作品を展示していたのだけれど、
強烈に印象に残ってるのが馬六明(マ・リウミン)のパフォーマンス映像なのだよなー。
男性なんですけれど、きれいなんですよー顔が。中性的というより無性的で。
んで、身体がすっごく華奢。痩せぎすの女子中学生みたいにも見える。

その顔と身体で、髪伸ばしてて、化粧してるから、顔のアップだけ見ると
「あれ? 男? 女?」
ってわからないのですよね、もちろんそれが馬のねらいなのですけれど。

今更ジェンダーかよ、とかそういう声が聞こえる気がしないでもないですが、
ジェンダーって別に性別に留まった話じゃないんですよね、
「私たちが当然視している規範・価値観」みたいなものを揺るがして見せることで
ふだん気にしてないのを気付かせるってのがこのテの作品の狙いだったりして、
で、「当然視してる規範・価値観」の中でいちばんわかりやすいのは性別かな、っていう。

特に男性でこういうトランスジェンダーなパフォーマンスをやってる人は
「性別」というより「価値観」全般に挑戦している気がする、
森村泰昌は自他の区別を揺るがすなどしていたしなぁ。

この馬六明という人は魚を生きたまま煮始めたり、
まだ生きてる魚たちを天井から吊るして、魚たちが死んでいく中で
シャワーを浴びてみたり(そしてタイトルは『FISH CHILD』)、
「いのち」とか「人の業」みたいなものも作品に取り込んでいて、
久しぶりに面白い人を知ってしまったなぁ、みたいなそんな感じでした。



あと東京ではどんな風に展示されていたか知らないですけど、
老人の蝋人形を電動車椅子に乗せて不規則に動かしてる『老人ホーム』って作品、
愛知県美術館で観るとびっくりしますよ。いきなり展示室手前にどかーん、てあるから。
私最初、ほんとに幼児用プレイスペースの老人版だと思ったもん(笑)。

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雑誌『モーニング2 No.21(2009/6/2号)』

『聖☆おにいさん』がないwww

なんか来月特製ブックレットになって付くらしいんで、
その準備で今月お休みなんでしょうけど……。
ちょっとモ2として、それはどうよ(笑)

聖☆おにいさん 3 (3) (モーニングKC)
聖☆おにいさん 3 (3) (モーニングKC)



とはいえ個人的には今月もやまだないと『ビアティチュード』
読めたんで良かったんですけどね。

「フツーとかそういうのやなんです」
と顔を真っ赤にするミズシマさんに、フジヲが語る
「~じゃないっていうのはぁ すでに~がまず存在してるんだよねぇ
 よく自分は~じゃないって言うけどさぁ
 自分がなにかであるためには ~をとことん否定するしかないのかなぁ
 じゃあさぁ ミズシマさんにとって~て何? 何なの?
 ~じゃないがあるってことは~であるもあるはずなのに

 たとえば普通? 普通であることってミズシマさんにとって何なの?
 そいでミズシマさんは普通に関してはいくらでも語れるかもしれないのに

 じゃあ自分はいったいどういう人間だって語ろうとはしないの?
 しじbちじがじゃないで省略しちゃうのかな?
 何で自分であることよりも~じゃないことにこだわるんだろうねー」

って台詞が「よくぞ言ってくれた!!」って感じで。
もうほんと身近な厨二病患者とか過去の私とかに読み聞かせたい(笑)。

ビアティチュードBEATITUDE 1 (1) (モーニングKC)
ビアティチュードBEATITUDE 1 (1) (モーニングKC)



それと前『フレンド』って読みきり載った鍬先かおりさんの新作キタ!
今回もじんわり絶妙な人情。
『シスター・シスター』という2人姉妹の物語で、
3人兄弟の次に2人姉妹が好きな私としては非常に楽しめました(=´ω`=)

ラストは私的には「ちょっと描きすぎかなー」って思ったけれど、
すごく考え抜いてのものだと思うので、べつにいいや。

夏から連載始まるらしい! クオリティ下げずに頑張ってほしいです。



松本栄子『荒呼吸』、趣味:「他人のお墓参り」ってのは共感できたなー。
私も雑司が谷霊園をむだに歩くのとか好きだった。

荒呼吸 1 (1) (ワイドKCモーニング)
荒呼吸 1 (1) (ワイドKCモーニング)



「ポテン生活」今月もよかったです。
確かにまとめて読めたほうが便利ですよね、単行本を買う決心がつきました。

ポテン生活 1 (1) (モーニングKC)
ポテン生活 1 (1) (モーニングKC)



来月号は渡辺ペコの新連載も始まるらしいので、楽しみにしています。

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「視覚の魔術 - だまし絵」展@名古屋市美術館



6月から★Bunkamuraでもやりますが、
私が行ってきたのは★名古屋市美術館の方。

もっと詳しい★オフィシャルWeb(?) 中日新聞社によるページ。

しかも行ったの先々週の日曜で、開始2日目だったからか鬼のように混んでいた……。
そろそろ落ち着いた頃ですかしらね。



いい展示でした。
「時代」「国」「画家」で絞った企画って事前知識が要りますけれど、
こういう「テーマ展」ていうの? ってそういうのナシで楽しめるじゃないですか。

今回も美術展とかあんまり行かなーい、って友達と行ってきたんですけど、
彼女も楽しんでくれたみたいです。そういうタイプの展示です。



アルチンボルドがでかでかとポスターやらチケットに使われていますが、
来ているのは『春』『水』の2点。
16世紀の絵なのに鮮やかだなぁ、とかヘンな感想……。

17世紀の「トロンプルイユ(仏語でずばり"だまし絵")」が多く来ていたのですが、
ほとんどが絵の中に額縁やキャンバスを描き「画中画」にしているというもので
どれも似ていて、正直「こんなにたくさんいいよwww」って感じでした;

でも
「人はいつの時代も、こーいう『おもろい』ものを求めてきたんだなぁ……」
と思うとなんだかじーんと来た。
むつかしいことを言うと、市民社会で商業主義で、現実味のあるものが
求められてたんでしょうね、宗教画とか神話画とかではなく。

あと日本の、江戸時代のだまし絵は面白かったですよ。
「へー、こんなのあったんだー」
って感じで。
何気ない仕草をしている人の絵でも、シルエットで見てみると
鶴や松の形になっていたりする広重の絵とか。



20世紀美術がたくさん来てたのも嬉しかった!
マグリット! ダリ! エッシャーはエッシャー展でいっぱい観たからいいけど!!
デュシャンやマン・レイにまで会えたのは嬉しいサプライズ。

あと福田美蘭はやっぱり面白いですね。
文字通り美術史を「ナナメに」見てますね。
森村泰昌と福田美蘭、2人は反抗的な「美術史の娘」だよなと思う




【開催期間】2009年4月11日(土)~6月7日(日)
【開館時間】午前9時30分~午後5時 金曜日は午後8時まで(入場は閉館の30分前まで)
【休館日】毎週月曜日 ただし5月4日(月・祝)は開館し、5月7日(木)は休館
【観覧料】一般  当日:1,300円 ・ 前売、団体:1,100円
     高大生 当日:900円 ・ 前売、団体:700円
     小中生 当日:500円 ・ 前売、団体:300円

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