2005/09/26 Category : Words ご丁寧なお言葉 「受付番号5番でお待ちの方」とか、丁寧な表現で他人を「方」って呼ぶじゃないですか。 これ、読み方「かた」ですよね。(あ、なんかカタカタうるさい文……;) でもこの漢字、「ほう」とも読みますよね。 方向の方、方角の方、方面の方……。 元からある意味はこっちです。 directionのこと。 なんでこれが他人を指す言葉にも転じたかというと、 「そっち方面にいらっしゃる人」 と、遠回しに表現することにより、丁寧さを示したから。「あなた」 も古文じゃ「あっちのほう」ってイミだしね。「山田様」とか、敬称の「さま」も一緒。 これは「よう」ですか。 元の意味は様子の様、様態の様、様式の様……。 これもストレートに「その人」って言うと無礼だからってんで、 「その人物の様な人」 と、遠回しに表現したのが始まり。 これは何もニポンゴに限った話じゃなくて、エーゴとかでも一緒。助動詞の時制を過去にずらして遠まわしにすると、より丁寧な表現になったり。(ex."Will you ...?"より"Would you...?"の方が丁寧、willは現在の意志を示し、wouldは過去に抱いていた意志を示す助動詞。)しかしこれ、なんでなんだろう、とちょっと考える。わかりやすい方が親切じゃん? とか、思うのだが。で、仮説。丁寧な表現が、なぜ丁寧だと扱われるかというと、それはひとえに「されて嬉しい」からじゃなかろうか。逆に言えば、遠まわしでない、ストレートな表現は、されて嬉しくない・不快なのでは。物理的な話になるけど、指差されるとムッと来るよね。これは「指差し=失礼」とする文化背景があるからだけど、なんでそう考える文化が出来たかっていうと、それはやっぱり指差されても嬉しくないからだろう。形態的に、それこそ「刺されそう」な感じするしねw言葉とかも、それと一緒なんじゃないかしらん。直接的に自分のことを言われると、ちょっとドキッとする。「あっちの方にいる人」ってワンクッション置かれた方が、感じ方が柔らかいのでは。あとは、婉曲表現を敢えて使うことによって、相手の知能レベルを認めていることをアピールしてる、とかね。単純な表現なら、粗野だったり幼稚だったりする人でも使えるけど、あなたは違うでしょ? て。 遠まわし云々で思い出したけど、「さようなら」「さらば」「では(それでは)」「じゃあ(それじゃあ)」「あばよ」って、全部「そのようであるなら」って意味なんだよね。「そのようであるなら、ここらでお別れしましょう」の後半を省略して、独立させた形。「別れる」っていう淋しい事態をダイレクトに言っていないところに、互いへの優しさを感じるニホンゴです。ヨーロッパの言語でも、「別れる」って意味を別れの挨拶に入れてる言語、たぶんないよね。世界中にもほとんどないんだろうな。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword