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紫式子日記

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『だれかのいとしいひと』角田光代


だれかのいとしいひと
だれかのいとしいひと



角田光代の小説って、ポラロイド写真みたいだと思う。



画質はぼんやりとしていて、全体として不鮮明な印象なんだけど、それゆえ対象の本質みたいなものが写されてる。

「見えたつもり」になって、実のところその対象を見失ってる みたいな感覚は、角田光代作品には、ない。



ふと湧き上がってすぐに消えてしまうような感情が、その瞬間を逃すことなく捕らえられている。

普通のフィルムだったら、現像に出すときには何を撮ったか忘れてしまうと思うのだけれど、角田光代はその瞬間に印画する。



中には、

「それ言っちゃおしまいだよ!」

みたいな、元も子もないものも、ある。

けれど、角田光代がそれを口に出して言ってくれたおかげで、気が楽になる場合がほとんど。



彼女曰く、純粋に疑問から出発して創作しているらしいんで。

他意とかないんで。

そういうところ、憎めなくって憎らしいよなぁ、なんて思うのです。



文庫版、解説が枡野浩一なのも嬉しい。

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