2006/06/13 Category : Books 『だれかのいとしいひと』角田光代 だれかのいとしいひと角田光代の小説って、ポラロイド写真みたいだと思う。画質はぼんやりとしていて、全体として不鮮明な印象なんだけど、それゆえ対象の本質みたいなものが写されてる。「見えたつもり」になって、実のところその対象を見失ってる みたいな感覚は、角田光代作品には、ない。ふと湧き上がってすぐに消えてしまうような感情が、その瞬間を逃すことなく捕らえられている。普通のフィルムだったら、現像に出すときには何を撮ったか忘れてしまうと思うのだけれど、角田光代はその瞬間に印画する。中には、「それ言っちゃおしまいだよ!」みたいな、元も子もないものも、ある。けれど、角田光代がそれを口に出して言ってくれたおかげで、気が楽になる場合がほとんど。彼女曰く、純粋に疑問から出発して創作しているらしいんで。他意とかないんで。そういうところ、憎めなくって憎らしいよなぁ、なんて思うのです。文庫版、解説が枡野浩一なのも嬉しい。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword