2007/04/14 Category : Music 『J.S.バッハ』礒山雅 J・S・バッハバッハはゴシックではなくてバロックの時代の人なんだけど、立ち読みした感じゴシックにも通じるアンビバレンスについて書かれてるぽくて、挑戦。まずバッハが生きた時代って、音楽がバロック様式から古典様式に移り変わる節目の時代で、社会面でも、ルターの宗教革命や職業の世襲制の崩壊みたいに「変革」の時代だったんですね。そういった中でバッハは、バロック的要素 ⇔ 新しい音楽の要素の矛盾相克を生きた。もっというと、上手く止揚させて、独自の音楽を生み出した。そしてバッハは、楽譜への書き込みが事細かであることで知られてるらしいのですが、実際のバッハの演奏は、とても即興的だったのだろうという分析。むしろ、即興的だったからこそ、細かい指定が必要だったのではないか?というアンビバレントな解釈が述べられています。そのため礒山氏オススメのバッハの演奏は、楽譜に忠実に、きっちりかっちりというより、ジャズ・アレンジなど、自由なリズムでなされたものなんだそう。「バッハはロックの元祖」なんてたまに聞きますけど、そういう「斬新さ」「即興性」を上手く取り込める人だったっていうのが、理由のひとつに挙げられるかもしれません。また、教会音楽を一般人のためのカンタータに転用したりして、「聖」のための音楽 ⇔ 「俗」のための音楽という次元も、やすやすと超えていたようです。それでも再三言われているのが、「神こそがバッハにとっては 一番の聴衆だった」ということ。そのため、バッハの音楽は常に荘厳さを持って響くのだ、と。このほか、資料からわかるかぎりのバッハの人柄・生活などにも触れられていて、バッハを身近に感じられ、読みやすいながらも充実した内容になってます。新書でこんな満足感あるの久しぶりだな。影響されて文中で紹介されていたジャック・ルーシェのジャズ・アレンジを聴いてみました。よかったです。クラシック&ジャズお好きな方は、zehi。 つづきはこちら [0回]PR
2007/04/13 Category : Art 『ゴシックとは何か』(再読) ゴシックとは何か―大聖堂の精神史やっぱ面白い本だゎ〜。前読んだときは発生期の「元祖」ゴシックばかり印象に残っていたけれど、今回は18〜19世紀の「ゴシック・リヴァイヴァル」に目が行った。『エロマンガ・スタディーズ』でも「ミーム」が全体を貫くキーワードだったけど、ゴシックもそうなった訳よね。ゴシックミーム。で、合理主義的な科学文明・産業社会が発展すると同時に、ゴシックの薄暗さ・不気味さがある層の人々に愛好され、ゴシック・ホラー、ゴシック・ロマンといった文学ジャンルになったってのも面白い話だよね。この辺のことは、この本の守備範囲外なんだけど。さらにその後「ゴシックミーム」は音楽分野に受け入れられ、それをMALICE MIZERのmana様が輸入し、いまや「ゴスロリ」なんて略称も定着してるんだから、人の文化ってわからんもんです。巻末、ガウディに関する記述が熱っぽくて微笑ましかった。ガウディは、ゴシック建築再建に携わった建築家の著書をガン読みしてたらしいです。「有機的」「グロテスク」「過剰」といったキーワードにおいてだけでなく、理論面においても「ゴシックの正統な後継者」なんですね。夏にはスペインに行きたい。 [0回]
2007/04/13 Category : Books 『エロマンガ・スタディーズ』 エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門いやすっげ。スゴい。スゴいしおもしろい。題材はエロマンガなんですけど、それを切りさばく理論手法がね。欲張りなの。メインとなる手法は「ミーム(文化遺伝子)」という考え方で、例えば「手塚キャラの中性性」が後の漫画家にも受け継がれる、という視点。そして、「一度生じたミームは、 盛衰こそすれ、 決して消えない」。だから今のエロマンガはいろんな「要素」が多層的に含まれていて、分類とかもしにくい。また流通の事情や法規制、さらに発表当時の世相なんかも考えあわせた分析は社会学的。「ロリコン」「巨乳」「妹系」など、ジャンル別に考察を進める第二章では、露骨ではないものの心理学的分析もなされます。「エロマンガがどうこう」っていうより、「ある学術的視点で 題材を分析するお手本」みたいに仕上がってます。もちろんエロマンガにも詳しくなれますし、自分が燃え(萌え)られるマンガとそうじゃないマンガはどこが違うのか、なんて考察まで自分でできるようになります。あぁ、なんでもっと早く読まなかったんだろ〜。「ルサンチマン発、 ミソジニー経由、 レイプ着」⇒凌辱ネタとか、参考になりますた。 [0回]
2007/04/12 Category : Movies 映画『トニー滝谷』 トニー滝谷 プレミアム・エディション独身で年上の友達が、以前の恋人と結婚を意識したことがあるよと言うのを聞いて妙に戸惑ったばかり。なんだか「誰かと一緒に生きる」という感触がわからない。まぁ、いざそういう暮らしを始めれば、どうでも良くなるものなのだろうけど。つか、予定ないしな。トニー滝谷は、ずっと一人で生きてきて、それが「とても自然」だった男性。だが彼は「とても自然に服をまとう」女性に恋し結婚、「一人に戻るのを怖れる」までになる。人生は無常、彼女は事故死し、後には彼女が遺した大量の衣服があたかも彼女の影のように部屋を占拠し……という、 不所持→獲得→喪失の物語。キモは「彼が、服をどうするか」なんだけど、その異常さは「やるせなさ」として、かえって共感ポイントになると思う。で、こういうの観ると、「獲得すること」の恐怖みたいなのを再認識して、冒頭の話に戻ると。や、ないけどね、予定。舞台のような作りの映画。さいしょイッセー尾形が主演だからかと疑ったが、原因はたぶんキホン真っ白な背景(壁)。舞台装置って、いちいち変えなくて済むように、汎用性の高い、抽象的なものを使ったりするじゃないですか。あの感じなんですね。「語り部」が語るべき台詞を、「登場人物」が喋っちゃう手法とか。宮沢りえが一人二役をやってるところとか。あとなんと言っても、坂本龍一による音楽!コレがスバラしかった。サティのように陰鬱で不安定な旋律なのに、サティの音楽に感じるような「苛立ち」を覚えない。存在感があるのに、耳に付かない。どれかってと、即興的なメロディ・リズムでしたよね。それも「舞台っぽさ」の理由か。こういった要素が相まって、浮遊感のある、しかし感情はリアルに伝わる不思議な雰囲気を生んでいます。不思議で、しかし切々と哀しい。原作を読んだのはだいぶ昔ですが、(村上春樹『レキシントンの幽霊』)たぶん、原作超えちゃってます。『空中庭園』以来の原作超え。あ、でも、村上春樹がハダに合わない人には、映画でも無理です。映画評サイトで星が少なめなのは、たぶんそういう理由。 つづきはこちら [0回]
2007/04/11 Category : Books 古本屋ハシゴした ワセダ生活5年目orzにして、初めてきちんと古本屋を利用する。探してたのはちくま学芸文庫『グロテスクの系譜』だったのになぜか手元にあるのはこの5冊。●幸田文『包む』今のところ、自分をごまかすところなく「好き」と言える唯一の作家。●マルキ・ド・サド作 澁澤龍彦訳『ソドム百二十日』『ソドムの市』の原作。映画よりずっと少年少女の数が多くて、たぶん内容も「ぉぇっ」てなる。●磯山雅『J.S.バッハ』なんか「ポリフォニー」とか「ジャズ」とか、ゴシックとか現代にも絡められるかな、と期待して買ってみた。●佐藤達生・木俣元一『大聖堂物語』酒井健以外のゴシック本も読まにゃあな、と購入。カラー図版が多く、視覚的に「ゴシック」を理解できる。著者が建築史家と美術史家というコンビなので、酒井よりも心情面・イデオロギー面への言及が少なく、技術面、また「美術の役目の変遷」に焦点が当てられている感じ。●『芸術新潮』92年9月号「ナチスが捺した頽敗芸術の烙印」エルンスト・バルラハや『レニ』を観たこともあって、「美意識」という観点からナチスを見れば私にもちょっとはわかるんじゃないかな、と楽観して [0回]