2004/12/09 Category : Comics エスニシティを意識させられるまんが 唐突ですが(再)、浅田寅ヲの『パイドパイパー』が好きなのです。昨日からここのLinksに出現させている村崎式子文庫でもrecommendしておきましたが……。で、登場人物見てもらうとわかると思うんだけど、このまんが、在日Korean・在日Chineseのオンパレードなのね。(この表現キライな方いらっしゃると思うけど、思いつく限り一番概念を共有しやすい表現なんです、許して。)実は今日授業で話が「在日外国人」「外国人移民」に及んでさ。今までイイ男だらけのアタマ使うアクションまんがだと思ってた『パイドパイパー』に、「エスニシティを考えるテクスト」という価値も見出してしまったのさ。 近未来の錦糸町。深川では中学生集団の非行が横行し、対中学生という名目のため結成された自警団"357"と名乗る少年グループと抗争を繰り返していた。って「作品紹介」にもあるけど、そしてこれがハナシの大筋と考えてもらって間違いじゃないんだけど、この「357」ってのが、在日Chinese、あるいは日系Chineseだけで構成されてる自警団なのね。だから拡大解釈すると、JapaneseChinese、の縮図になってるとも言えるのね。357寄りのJapaneseは、主人公?の夏比古だけなの。高橋くんは在日Chineseで、作品中には出てこないけど中国名もある子ね、念のため。そしてエスニシティを意識させるセリフもいたる所に。いくつか挙げれば、「まあうちの学区なんて半分以上日本人じゃないですから」(1巻、学校の先生がロシア人少年について話している中で)「兄さんが許してくれないわ(中略)同じ国の人と一緒になってもらいたいのよ」(2巻、瑛二の姉・梨花が夏比古のプロポーズに対して)「(高橋くんは僕を)なんか気にかけてくれてたみたいで 日本人じゃないつながりみたいな」(3巻、瑛二が高橋の思い出を語る中で)特にエスニシティが気にならない普通のセリフでも、ニホンゴ以外の言語(英語、広東語)はフキダシの色が変わってて、「ちがう言語だぜ〜」ってわかりやすくなってるしね。まーそんなのはこのまんがの一側面に過ぎないし、結末にエスニシティが関わってくるのか否か、完結していないんでわかんないんですが……。コミックス派だから今ハナシがどーなってるかわからんし。。。でも浅田寅ヲ、絵を見る限りアタマ良さげなまんが家だし、ていうかアタマ良くなきゃこんなアタマ使うまんが描けないはずだし、無意味にこんな露骨な設定をするとは思えないんですよねー……。何はともあれ、「Japaneseと"Japanese以外"の平和な共存は果たされなかった」ってところからスタートしてるまんがなんです。個人間の友情は成立してるけど、集団になったときに、ね。角が立つことを恐れずに言わせていただけば、私結構、この予想というか見方に同意してる。くだらない意識とか、社会的・経済的なこと考えると、どうしてもね。ある程度は時間やら社会の「成熟」やら、Japaneseの国家的アイデンティティの衰退で気にならなくなるだろうけど……。エスニシティとかそういう概念が存在する以上はだ。皆さまはどーよ。どーお考えよ。エスニシティを話題にする時点で民族主義者っぽくってヤなんだけどさ。でも、好きだと公言しているまんがにそういう側面があったって気付いちゃったからさ。参考までに言っておくと、『パイド』に出てくる在日Korean&Chineseは、キホンみんなニホンゴ自由なんですよ。瑛二なんかニホンゴしかしゃべれないっていう設定なんです。だから日本人に「あ゛、ニッポン人じゃない人だ」みたいに思われることもないはずだし……。職業選択の幅も広いはずだし……。コトバの壁越えても、壁は猶なくならないってのが浅田寅ヲ予想なのかなぁ。セリフ読み返すと、在日外国人間にも「日本人じゃないつながり」がある、みたいな論調だし……。んー、物語の最後にエスニシティが料理されるのか、されるとしたらどうなるのか、気になりどころです。あと、『パイド』におけるエスニシティに着目したとき目を引くのが、治安を悪くしてるのは日本人側ってところよね。これは結構、鮮やかにヘンケンを斬ってると思う。「外国人による犯罪が云々」って言説が人々の間には根深いけど、そんなことないって。何にせよ、アツいまんがです、『パイドパイパー』。エスニシティ、アクション、イイ男、きれいな線、アタマ使う系。どれかひとつでもピンときたらお買い求めあれ。オフラインで私と知り合いの方ならお貸ししますよ。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword