2006/01/24 Category : Comics 『ソラミミ』やまだないと ソラミミナイトー先生、出番ですよ。釣り目で眼鏡で、西荻窪在住のまんが家「ナイトートオル」は、やまだないと作品ではおなじみのキャラクター。ファンの間ではやまだないとの化身として認知されている。そんなナイトー先生主体の短編ばかりが12本集められた単行本。ナイトー先生が登場する作品は『西荻夫婦』『ポルノ青春狂走曲』等いくつかあるけれど、どれも「周りの人から見た」ナイトー先生で、ナイトー先生自身の目線に立った作品〔集〕はこれが初めてなんじゃないかしら。『かへおれ』という短編では、奥さんがナイトー先生に「だけどあたしは許してあげるからね・・・ あんたのそのうしろめたさ・・・」と言うシーンがある。これが『西荻夫婦』だったら、恐らくナイトー先生のしょんぼりしたような、眉毛の下がった表情が描かれて終わるんだけど、『かへおれ』では「カノジョのうれしいコトバとか・・・ それを・・・幸せだと信じられない」というモノローグが入る。“複雑な心境”と呼ばれるようなもの、そういうものがコトバに表されている。だけれどコトバにしたところで複雑なものは複雑だから、やっぱりそのコトバは複雑で、矛盾を抱えている。でも、だからこそ、コトバに出されて陳腐になるなんてことはなくて、かえって深み・渋み・切なさ、そんなものが後に残る。やまだないとは元々上手い台詞を書くけれど、『ソラミミ』には特に「クる」コトバが多い気がする。 上にも引いた「自分の為に なんてものをあんたがおしつけるのは 誰の為にも生きていない自分のうしろめたさを薄める為でしょう?」「だけどあたしは許してあげるからね・・・ あんたのそのうしろめたさ・・・」『かへおれ』をはじめ、「オレらってめんどくさいのにそういうの求めてるとこがある ほっといてといいながら ほっとかれることがいちばんコワイ」『不機嫌猫』など。ナイトー先生がインタビューを受けるという設定の『津田沼』では「聞いて欲しそうな顔をして 聞かれるとへそを曲げるのは 俺の嫌〜なとこで それゆえ漫画家なんて自意識過剰な仕事をしている」と、ナイトー先生自身による「ナイトートオル論」が拝見できます。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword