2008/02/17 Category : Books 『崩れ』幸田文 崩れ (講談社文庫)すごく薄い文庫なのに、えらく時間掛かった……。幸田文ってわかりやすいけど歯が立たないんだよな。フシギ。晩年、地崩れ・地滑りに目覚めた幸田文が、日本各地の「崩れ」跡を「見てある記」。大自然の荒々しいエネルギーに呆然となる心境が、毎度の精緻な文体でさくさくと描かれています。対象がすでに崩れ、止まった「跡」だからか、いつもより立ち止まって物事を見ている印象。自身の激動の人生を、晩年に振り返る様とも重なります。そうそう、実は崩れそのものより、文章のそこかしこに挟まれる幸田文自身の「老い」を見つめる姿がイイ。「山より先に、お母様が崩れてしまったのですね――」と娘に言われて、素直に「子は母のように、母は子のようになっていく」なんて書ける辺り、やっぱり人間が出来ていると思う。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword