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紫式子日記

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『崩れ』幸田文


すごく薄い文庫なのに、えらく時間掛かった……。
幸田文ってわかりやすいけど歯が立たないんだよな。
フシギ。

晩年、地崩れ・地滑りに目覚めた幸田文が、
日本各地の「崩れ」跡を「見てある記」。

大自然の荒々しいエネルギーに呆然となる心境が、
毎度の精緻な文体でさくさくと描かれています。

対象がすでに崩れ、止まった「跡」だからか、
いつもより立ち止まって
物事を見ている印象。

自身の激動の人生を、
晩年に振り返る様とも
重なります。

そうそう、実は崩れそのものより、
文章のそこかしこに挟まれる
幸田文自身の「老い」を見つめる姿がイイ。

「山より先に、お母様が崩れてしまったのですね――」
と娘に言われて、素直に
「子は母のように、母は子のようになっていく」
なんて書ける辺り、
やっぱり人間が出来ていると思う。

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