2005/07/12 Category : Books 『多毛留』 多毛留この絵本との出会いは、私の記憶が確かなら小学4年のときだった。廊下に仮設された、「おすすめ図書」コーナーに並んでいた。当時既にビアズリーを知っていた(キモい)小学生の私は、まずビアズリーっぽい絵だな、と思い、哀しい色遣いだな、と次に思った。ストーリーはいたってシンプルで、残酷。こんなんでいいのか、と衝撃を受けもしたが、こんなんでもいいのだろう、という、空虚な読後感が残った。米倉斉加年の、行き場のない切なさに溢れた絵も、その読後感に拍車を駆けたのだろう。10年後の先週金曜、私はバーで初対面の男性と相席する。興が乗って、私が好きな画家の話になった。そこで私は初めて、恐らく人生で初めて、他人にこの絵本について説明した。当時は何とも思っていなかったこの絵本の要素――父と息子、朝鮮人、血といった要素――が次々と私の口をついて出て、それに伴って私がこの10年、他の場所で培ってきた知識の体系にするすると絡みついていった。また読みたい、と思った。今の私だからこそ、読むべきなのだろう、と思った。 そして、この絵本の影響で未だに私はナヨい男好きなのかなぁ、と邪推してみたりしてみなかったり。。。 [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword