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紫式子日記

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『キッチン』吉本ばなな


キッチン
キッチン




あなたへ



吉本ばななの『キッチン』は読んだことある?

多分ないよね。

どこよりも台所が好きで、何よりも料理することが好きな女の子の話。



私は吉本ばななのファンという訳ではないけれど、高校のときの友達が薦めてくれたから、『キッチン』だけは読んでるんだ。

その子は(それこそあなたのように)頭が良くって、私の内面を見事に言い当てていくような、そういう子なんだけど……その子は「この主人公は式子だと思った」って薦めてくれたの。
その時は何となくその子の言った意味がわかったような、わからなかったような、半端な感じだったんだ。

でもさっき『キッチン』を読み返して、主人公と私の共通点に気付いたのね。

(高校時代のその子がそれを意識してたかどうかは確認の仕様がないけど。)



主人公は、両親とも祖父母とも死別して、天外孤独なの。

それでもう、潔いほど孤独なのね。

そして孤独ゆえに、ひとつひとつの事にすごく必死になるの。

それはすごく不安定で、平穏な幸福とは対極にあるんだけど、彼女は必死になってしまう。

しかもその状況を愛してしまってるの。

で、その必死さが投影されるのが台所であり、料理なんだけどね。





私はまだ両親・祖父母全員存命だけど……私が一人っ子だっていうのは知ってたっけ?

そう、私一人っ子で、親に死なれたら寄る辺なき身なのね。

そういうのもあって……覚悟じゃないけど……孤独というものを、リアルに想定しやすい立場にいます。

私に余裕がないように見えることがあるなら、そのせいかもしれない。

なんだか最近、そんな孤独と必死さのセットを強く意識しています。

それが『キッチン』を読み返したことで、言語化されてしまった感じ。



結局のところ私は独りなんだという感慨が、私を強くさせ、しかも安心させてくれます。

あなたは結局のところ私を私の脚で立たせるでしょう。

だから私は……あなたが不思議がる位……いろいろ必死になれるし、あなたと一緒にいるのが好きなのです。



かしこ

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