2006/03/05 Category : Books 『こんなにも恋はせつない』唯川恵選 こんなにも恋はせつない実はそんなに活字に耐性のある人間ではないので、短篇集の類は非常にありがたい。特にアンソロジーは、1冊分の価格で何人もの作家の作品が読めるので、得した気分になる。このアンソロジーはまず、執筆陣がすごい。江國香織、田辺聖子、林 真理子、山田詠美、唯川 恵 等々、当代の女流ビッグネームが並ぶ。加えて、内容がすごい。いずれの作品も、壮絶なギリギリの恋愛感情を描いている。少女が、相手の青年にとって「忘れられない子」になるためにとった行動を書き留めた、江國香織『焼却炉』。自分のためなら「何でも」する青年に、戸惑いつつも揺さぶられていく女性の心を緻密に追った、小池真理子『倒錯の庭』。全てが張り詰めたように危うく、狂おしい。しかし、須らく恋愛感情にはこういう側面があるのではないか、とも思わされる。思い詰める感情、という側面。選者の唯川恵自身も、後書き(むしろエッセイ)『恋愛――この割に合わないこと』の中で「まるで恋愛に柔らかく首を絞められるように、恍惚と恐怖に揺れる女性たちが登場するということで、心惹かれた作品ばかりを集めさせていただいた。」と述べている。「人魚姫」に端を発した、唯川氏独自の恋愛観も語られている。この後書きだけでも必見である。阿部定やサロメに共感してしまう女子の皆さまには、特にオススメ。男子の皆さまは、怖いもの見たさでドウゾ。 【目次】焼却炉(江国香織)物語が、始まる(川上弘美)倒錯の庭(小池真理子)ドン・ジョバンニ(高樹のぶ子)おそすぎますか?(田辺聖子)グレーの選択(藤堂志津子)花を枯らす(林真理子)アンフィニ(森瑤子)天国の右の手(山田詠美)月光の果て(唯川恵) [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword