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紫式子日記

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モダン・パラダイス展




ポール・ゴーギャン《かぐわしき大地》1892年 大原美術館蔵


美術館ウォーカー復帰第2弾は、東京国立近代美術館の「モダン・パラダイス展」

題名イケてないし、ポスター絵ゴーギャン(あんま好きくない)だしでそんなに期待してなかったのですが、

さ す が M O M A T 。

今回もソツなく! 楽しませていただきました。



大原美術館との共同企画だそうな。

近代アートのダイジェスト総決算という感じ。

「浅く広く」感は否めませんが、作品レベルの高さで軽く相殺。

明るいのも暗いのも、軽いのも重いのも、オナニー気味なのもヤリまくり気味なのも(・・・)、どれもひっくるめてモダンアート、いいなぁ!と思わせてくれます。

なるほど、それで「モダン・パラダイス」か。





以下、お気に入り作品メモ。



1章 光あれ

近代アートにおける“光”の描写を追ったセクション。

印象派だけでなく、写真表現の広がりも扱われている。




◎ジョヴァンニ・セガンティーニ『アルプスの真昼』

有名な絵だけれど、実物のほうが良かった!

細い線が集まっているような描き方をしていて、本当に光がキラキラして見える。

高原の日差しとのどかさが、ちゃんと感じられた。



◎山中信夫『太陽』シリーズ

『東京の太陽』『マンハッタンの太陽』などと題して、黒い中に太陽のような光のかたまりがあり、その中に各都市の風景が見える……という写真を焼いている。

黒い部分の面積が多い分、却って「太陽」の部分をまぶしく感じた。

風景写真も淡くて、いいふんいき。



◎アルベール・マルケ『マルセイユの港』

朝日に輝くマルセイユ港かな?

いいミドリ使ってます。

ペールグリーンクリーム色のグラデーションがたまらない。大好き。

「ザ・優しい光」といった感じ。





2章 まさぐる手・もだえる空間

「視覚より触覚に訴える芸術」と銘打ち、つまりは「見たまんま」でなく「感じるさま」を描いた作品群。

印象派の理論の応用版なんだろうね、こういう発想は。




◎瀧口修造のデカルコマニー作品

「デカルコマニー」というのは、絵の具を無作為に紙に付け、たらしたり他の紙で押し広げたりする技法のこと。

これがまたキッモい、毛細血管みたいな線が出るんですけれども、瀧口修造はそのキモさを最大限に活かしていたね!!(゜д゜)

キモいのに見入っちゃうんだ、しかも。

神は細部に宿るとも、悪魔は細部に宿るともいうらしいけど……。

無作為に・作られた・細部。うーん、尋常じゃない空気をまとっていたぞ、と。。。



◎金村修『BLACK PARACHUTE EARS』

都市風景がすっごく汚い感じに写されてる。

が濃くなるように焼いてあるんだな。

でもこの雰囲気はどこかで感じた、そうだ夕闇押し寄せる代々木だ、なーんてことを考えてた。

カメラを通しているはずなのに、実際の風景よりも脳内の情景に近い。

こーいう写真見ると「写真、いいなぁ」なんて思っちゃうよね。



◎ジャクスン・ポロック『カット・アウト』

初ポロックかも!?

案外小さいのね。

絵の具の汚さとか切り口とか、実物はやっぱり生々しい。

しかもその絵の具がくすんでいて、まるでポロックの「アクション」の死体みたいだった。





3章 心のかたち

抽象画だけでなく、「雰囲気描写」に重点が置かれた肖像画なども。
◎堂本右美『Kanashi-11』

単純に、色とか造形が好きだった。

空色桜色のグラデーションといい、暗雲みたいなやつを掴むようなカボチャみたいな曲線も。

大きくて、霞がかった風景を見ているようにも感じます。



◎オスカー・ココシュカ『アルマ・マーラーの肖像』

『風の花嫁』といい、この人の絵って、ガサガサしてるのに愛を感じるのよね。

色がパステルトーンだからかなぁ……。

ルノワールほど素直じゃない愛っていうか。



◎アルフレッド・スティーグリッツ『ジョージア・オキーフ:ある肖像』

これはスゴかった!!

7cm×10cmくらいのすっごく小さな写真なのに、迫力を感じる!!

写真家のオキーフへの敬意? オキーフの存在感? オキーフが生じさせてる、場の緊張?

たぶん、それ、全部。たぶん、その、全部。

私がオキーフのことを魂の姉のように慕っているというのもあって、鮮烈な印象の一枚でした。



◎セバスチャン・サルガド『サヘルの飢饉』シリーズ

対象は痛々しいのに、構図がアーティスティックゆえ、幻想的に感じる……。





4章 夢かうつつか

象徴派やシュールレアリズムなど、空想・幻想の世界を描いた作品。



◎ギュスターヴ・モロー『雅歌』

また会えたね……。なんつて。

前はくすんだ肌色にばかり目が行っていたけれど、手に持った花の赤の鮮やかさが目に留まって、現実離れしたそのヴィヴィッドさもまた、“夢”なんだな……と。



◎イヴ・タンギー『聾者の耳』

なんか、全然キョーミなかったタンギーをいいなぁ、と思うようになっている。

まろやかなグラデーションとか、細い輪郭線とか。

とろけそうなオブジェの形状はダリっぽいけど、

ダリみたいに下品な色遣いもしていないし、鬱屈した物語も読み取れない。

この夢の世界に寝そべってみたい、と思う。



◎やなぎみわ『寓話シリーズ』

やなぎみわって名前はよく聞くけれど、こんなにスゴい人だったんだ!?

シュールって大抵サラッとしているというか、掴み所がないんだけれど、この人のは迫力あった。

重厚さがあった。

でもモチーフはあくまでシュール。

上野のチーちゃんとも対談してるらしいし、ちょっとチェックしよう。



◎藤田嗣治『血戦ガダルカナル』

見れて嬉しいけど……このセクションでいいんか?;





5章 楽園(パラダイス)へ

内面へ向かうのと並行して繰り広げられた、近代アートの「解放」の系譜。



◎東松照明『光る風・沖縄 小浜島』

写真作品。

ピントのメリハリで合成かと思ったんだけど、リアル写真だったらしい。

ヤギがかわいい。葉っぱを頭に乗せてるのが、合成ぽさと相まってかわいい。



◎オーギュスト・ルノワール『泉による女』

ルノワールを見るとあふれ出る幸せで泣けてくる……のが常だったのだけれど、今日に限ってはなんかゾクゾクした。

あの、エロティックな「ゾクゾク」ね。

やっと私も「第3の脚で描いてる」ってのがわかってきたか。

陰影の暗さが、どーも、ね。



◎土田麦僊『湯女』

いつも〔部分〕でしか見てないから知らなかったけど、面積としては周囲のが占める率のが高いのね。

これが朱の着物を際立たせて「紅一点」に仕立ててるんだ。

藤とかキジが枝間に見えるのも、楽園ムードを醸しててハッピー。



◎トーマス・シュトゥルート『パラダイス13』

森の香気にむせかえりそうな写真。

コントラストが強くて彩度が高くなるように加工してあるんだと思う。

湿気まで感じるよ。

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