2005/11/09 Category : Art ドイツ写真の現在 竹橋に来る用事(って言ったらバレバレなんだろうか)があったので、ついでに東京国立近代美術館の「ドイツ写真の現在」展を観てきました。観て「怖いっ!」って思う写真に久しぶりに会いました……のっけから足元ぐらつかされたのは、ベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻の作品。(ペンシルヴェニア州ベツレヘム 1986年 ©the artist )給水塔、炭鉱の採掘塔、鉄鋼所の溶鉱炉みたいな産業建築物を淡々と撮っているのですが、これがなかなかどうして、気味悪い。同じ形のクレーンや煙突が並んでいる風景が、この人たちのファインダーを通すとすごく不気味でグロテスクに見えるんです。あと、給水タンクとかガスタンクが画面全体にバン! と来た写真とかには、無生物なのに威圧感・圧迫感を覚えました。でも、ずっと見てるとそのタンクが、支柱で地面に縛り付けられているようにも見えてくるんですよね。工業化社会の不穏さ・恐ろしさと悲哀を同時に撮りこんでいるように感じました。アンドレアス・グルスキーはベッヒャー氏の教え子。「同じ形が並んでいる風景」の奇怪さを鮮やかに撮っているところが共通していますが、グルスキーの方が色彩・構図が幾何学的・無生物的。(グリーリー 2003年 ©Andreas Gursky)そのよそよそしさがまた、人間疎外窮まった現代社会! って感じで、ゾワゾワさせてくれました。トーマス・デマンドの手法も面白かったな。 (浴室 1997年 ©Thomas Demand, VG Bild Kunst, Bonn/ APG-JAA, Tokyo 2005 )これ、?ニュース写真を?紙の模型で再現して?また撮影するっていう工程を経てるんですよ。幾重にもマスメディアを通してしか私たちの元に届かない、情報のアンリアルさを、写真という「真実を写す」と信じられているものによって表現する、そんなアイロニーっぷり。こちら、「ニヤリ」系。ロレッタ・ルックスは……今月の美術手帖の表紙にもなってますが……まず「え、これ写真だったの!?」ってハナシですよね。(窓辺にて 2004年 ©the artist )色彩とかモチーフとか、奈良美智ぽいな、ってちょっと思ったけど。子どもの写真を加工して、これまた加工して作った背景と組み合わせて、ってやってるんです。んで(たぶん意図的に)合成の境目が見えて、これまたよそよそしい。リアリティを欠く、不安な空気を醸していました。写真って、今までまじめに観たことがなかったんですが、この展示でだいぶ考え方改まりました。ドイツだけじゃなくて、他の国々の状況も知りたいね。美術手帖 11月号 [雑誌] [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword