2015/04/26 Category : Art 「魔女の秘密展」~メディア革命が加速させた魔女狩り~ ★魔女の秘密展 Secret Witches Exhibition久しぶりの展覧会レビューです。実は展覧会はブログに書いてない間も何回か行っているのですけれども……。久しぶりにものすごぉぉぉぉく刺激を受けた展覧会だったので、思わずキーボードを叩いております。 展示の主軸は魔女狩りの歴史。魔女狩りが行われるようになる前の人々の魔女・魔術との関わり方、魔女狩りが行われるようになった社会的背景、魔女狩りに関する資料。そして、おまけのような感じで、魔女狩りが衰退した後~現在の「魔女像」に関する展示があります。私がギクッとなったのは、人々を魔女狩りに駆り立てた一因として「メディア革命」が挙げられていたこと。「15世紀にグーテンベルクが活版印刷術を発明」というのは、世界史の教科書で誰もが目にしたことがあると思います。そしてセットで「ルターが訳したドイツ語聖書が多くの人びとに行きわたり宗教改革に発展した」というのも教わったのではないでしょうか。そのような形で活版印刷術がヨーロッパの近代化の一助となったのも確かです。ですが一方で、神学者・法律家たちが記した「天候不良の原因は魔女の魔術」「こんな女は魔女である」という誤った「魔女論」の印刷物も同様に拡散していきました。この時代、道路が整備され、印刷物の流通がスムーズになったことも、情報の伝播・拡散の加速に拍車をかけました。「こんな女は魔女」という「情報」を地方の人々も手にできるようになり、「うちの村にも条件に当てはまる女=魔女がいる」という通報が全国各地でなされるようになります。結果として、魔女狩りの被害者が増えました。展示された活版印刷機と散らばるビラを前に、Twitterで一瞬にしてデマが拡がることや、放射能汚染に関する風評被害のことを連想せざるをえませんでした。時代が変わり、情報メディアが変わっても、人間の「弱さ」「怯え方」は変わらない。しかも現代は当時に比べて格段に情報伝達の速度が上がっている。さらに、特定の権威的存在だけでなく、個人が情報を発信できるようになっている。それは恩恵に違いないけど、同時に恐ろしい道具を手にしていることでもあるのだ、とうすら寒い気持ちになりました。展示内容も全体として「生々しさ」を感じさせることを重視していたように思えます。展示内にディスプレイが設置され、魔女と疑われて逮捕・拷問された女性や、被告人を理不尽に追いつめる異端審問官がこちらを見つめて語りかける映像が流されます。(ちなみに、異端審問官の声は俳優の佐々木蔵之介さんが担当してらっしゃいます。)火あぶりの薪の積み方を再現した展示品は赤とオレンジの照明で照らされ、火が燃える音が流されています。その周りもディスプレイで囲まれ、火あぶりにされる魔女を見物する民衆たちの顔が映し出されています。「きっとあなたも民衆の一人になった感覚に陥るはずだ」というのはリーフレットに書かれた一文。歴史は繰り返す。この行為もまた。18世紀末(思っていたより最近ですね)にやっと魔女狩りは衰退していきます。背景となったのはもちろん自然科学の進歩。正しい知識が不当に傷つけられる人たちを減らす……というのは、『知ろうとすること』を読んだときも思ったことでした。情報とメディアとの関わり方。ロゴやメインビジュアル、グッズ等のデザインが潔いくらい女子狙いの企画展ですが、全ての人が見て考えるべきことが詰まっていると思いました。名古屋にも巡回予定のようなので、またじっくり考えに行きたいと思います。★開催情報・チケット | 魔女の秘密展 Secret Witches Exhibition [1回]PR