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紫式子日記

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『おとうと』幸田文

おとうと (新潮文庫)
おとうと (新潮文庫)

姉弟の二人きょうだい。

前半は、
「あー、お姉ちゃんのいる弟ってこう育つよねー」
ってうなずいてしまうリアルな日常。
弟がいる「姉」ポジションの友達に貸そうかな、
なんて思い始めたところで、弟の肺炎が発覚する。

振り返ると、全編が「死」に彩られている。
かさかさしていて白い。
「ホラホラ、これが僕の骨だ」的な乾度。
(「湿度」じゃない。「寒度」であって「温度」ではなく。)

かつかつと、乾いた骨のぶつかりあう音がする。
看病する主人公の耳には、その音がまとわりついている。
その音をBGMに、克明になっていく父の想い、継母の想い。

「気付いてしまう」「見えてしまう」不幸。
そんなものを感じる、幸田文の作品には。
淡々とした緻密な表現、それがかえって哀切さを感じさせる。
『おとうと』は題材が題材なだけに、なおさら。


つぎは『木』を読みます。
木 (新潮文庫)
木 (新潮文庫)

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