2008/11/27 Category : Books 『おとうと』幸田文 ★おとうと (新潮文庫)姉弟の二人きょうだい。前半は、「あー、お姉ちゃんのいる弟ってこう育つよねー」ってうなずいてしまうリアルな日常。弟がいる「姉」ポジションの友達に貸そうかな、なんて思い始めたところで、弟の肺炎が発覚する。振り返ると、全編が「死」に彩られている。かさかさしていて白い。「ホラホラ、これが僕の骨だ」的な乾度。(「湿度」じゃない。「寒度」であって「温度」ではなく。)かつかつと、乾いた骨のぶつかりあう音がする。看病する主人公の耳には、その音がまとわりついている。その音をBGMに、克明になっていく父の想い、継母の想い。「気付いてしまう」「見えてしまう」不幸。そんなものを感じる、幸田文の作品には。淡々とした緻密な表現、それがかえって哀切さを感じさせる。『おとうと』は題材が題材なだけに、なおさら。つぎは『木』を読みます。 木 (新潮文庫) [0回]PR Comment0 Comment Comment Form お名前name タイトルtitle メールアドレスmail address URLurl コメントcomment パスワードpassword